因果応報 (ページ23)

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橙Side

二人が出て行った後の楽屋の空気は最悪やった

誰も口を開かない

「ねぇ阿部ちゃん、」

「な、に…？」

だから皆が明るくなる話題を出そうと思った

ただそれだけだったのに…

「阿部ちゃんとめめって付き合ってるん？」

『!!!!!!』

「？」

「な、んで…」

明るくなると思った

俺とふっかさんが付き合うことになったのを心から喜んでくれた皆だから

だから、二人の恋愛話も盛り上がると思ったのに…

皆は一斉に目を逸らした

「ごめん…。俺なんか変なこと言った？ほんまごめん…」

「いやっ…。康二は悪くないよ。でもどうしてそう思ったの？」

どうやら空気が読めていなかったらしい俺をフォローしてくれたのは佐久間くんだった

「だっていつも一緒におるやろ？今日だってこっち来ないで二人で固まってたやん。だから…二人は特別な関係なんかなぁって…」

「そっか…」

「皆も、二人に気ぃ遣って二人きりにしてるんかなって…。違うんならごめん…」

ちらっと阿部ちゃんを見ると、とても苦しそうな表情をしていて

何も覚えていない俺は、
触れてはいけない何かに触れてしまったのだと悟る

「ご、めん…」

「違うよ…」

「うん…」

「俺もめめも、好きな人いるから…」

「あ、そうなんや…」

阿部ちゃんの返答があまりにも気まずくて目を逸らす

勘違いやったんや、恥ずかしいなぁ俺…

「めめの好きな人はね、本当に優しくてかっこよくて可愛くてすごく温かくて…。めめはね、本当にその人のことが大好きなの。だから、俺なんかを好きになることは無いよ」

「へぇ。優良物件やね！」

「そう、だね…」

この空気を変えたくて、
笑ってくれると思って言ってみたのにスベった…

佐久間くん辺りなら優良物件って何だよ！って
笑ってくれると思ったのに何か悲しい…

「じゃあ阿部ちゃんの好きな人はどんな人なん？」

「…っ」

その質問に大袈裟なくらい肩をびくりと揺らした阿部ちゃんに
また余計なことを言ってしまったのかもと反省する

「ごめっ…言いたくないなら…」

「…俺のことが大嫌いな人。」

言わなくて良いよと言おうとしたら
それを遮るように発された言葉に思わず目を見開いた

「俺のことが大嫌いな人だよ。」

もう一度俺の目を真っ直ぐ見て言った阿部ちゃんの笑顔は
今まで見た笑顔の中で一番悲しかった…

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