【言葉のいらない瞬間】 (ページ36)

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*033 長野side ページ36

ーｶﾞｯｼｬｰﾝー

体がうまく動かない

僕は自分の吐く息がｾﾞｰｾﾞｰと掠れた音に変わっているのに気がついた

水を、水を…

ﾌﾗﾌﾗしながら流しに手をついた

水を飲むはずだったのに反対に僕の体内から液体が溢れ出た
ついていた手も力を失う…

「長野!!」

その声がしたとたん、僕を制御していた感情が壊れた

“長野”“ながの”“なが”“な”

ダレカガクル？

目の前の人と目があった

頭に違和感を感じて手を触れた
そこには赤い物体がべっとりと手を染めていた
頭が真っ白になって嫌な記憶が思い出される…

ーｷｰﾝー

ｸﾞｼｬ、ｶﾞﾗ、ﾊﾞﾀ、ｺﾞﾘ、ｷｬｰ、ｸﾞｼｬｸﾞｼｬ、ｱｱｧｧｧｱｱｧｱ、、ﾀﾞﾝﾀﾞﾝﾀﾞﾝ、ｸﾞﾘｸﾞﾘ、ﾏｯﾃ、ｸﾞﾁｬｸﾞﾁｬ…

“お前が悪いんだ”

長野「どうして…どぅっ」

どうして僕らだったのか…
どうしてこっちに来るのか…
わからなくて…
わからなくて…

それでも奴はこっちに来て…

僕はパニックを起こしていた。

息がうまく吸えなくて…
此処が何処なのかわからなくて…

ーｷﾞｭｯ

僕は何かに押さえ付けられた

殺されるっ

何度も何度も暴れまわった

お願い離して…
僕は生きなければならない…
僕はあのとき生かされたんだ…

「…ぶだ…だ…うぶ…だい…ぶ…だいじょうぶ…俺と一緒に呼吸しろ…浅く…浅く」

何処からか声が聞こえた…
とても優しく落ち着いた低い声だった…

「そうだ、大丈夫だ、大丈夫。大丈夫だ、ここは俺の中だ」

僕はこの優しい声の中？

僕の中に一定のリズムが刻まれていく
呼吸も鼓動も合わさっていく

自然と意識を手放した

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

目が覚めると頭がｽﾞｷﾝとした
何これ…頭にはガーゼとテープが張られていた

さっき変な夢を見ていたような…
あれ？昨日は何時に帰ってきたんだっけ…

長野「あ！！やばい、岡田、学校！！」

あれ？声がガサガサだ…喉が焼けるように痛い
まだ覚醒しきっていないのか身体中がずきずきと痛む、
なんか身体中が火照っている

あ、岡田岡田、急がなきゃ

喉の調子を咳払いで整えてから体を起こしてドアをあけた
そこにはもう岡田の姿があった

当たり前か…(汗)

長野「おはよう、岡田、ごめん、寝坊した…今からつくっえ？坂本くん何でいるの？」

台所には坂本くんがいて、食卓には綺麗に和食が並べられていた

坂本「お前なぁ！！さんざ」