*032 長野side ページ35
上司「じゃあ、こらはながのくんら、どうおもぬぅ？」
僕に質問が回ってきた
先輩の呂律が回っていないのか僕の耳が可笑しいのかわからない
長野「…」
目眩がする、目をぎゅっとつぶってから深呼吸をした
「長野さあん？だいじやうぶですか？今日ぜんへんしゃべっへなびてふよー」
「それにしてもなん…くん…すご…だ…って」「ああ…なが…くんラッキー…ねぇ」「で…あ…おな…かお…」
やばい、気持ち悪い…
鼓動が早くなる…
手をぎゅっとにぎって堪えた
だめだ…
“ラッキーだね”君は“ラッキーだったよ”“良かったね”“頑張らなきゃいけないんだよ”“お母さんお父さんも幸せだね”
そんな言葉が頭をよぎる
やめろ、止めてくれ…身体中が汗ばんで額から汗が垂れる…
すると冷たい感触が頬を支えた
部長「長野、ついたぞｯ、お前大丈夫かあ？早くかえってゆっくり休め、ほらお茶、今日は10時からだぞ」
ゆっくり目を開けると頭が引き裂かれるように痛みが走る
目の前には部長がお茶の缶をもっていてドアに手をかけて僕に呼び掛けていた
どうやらあのまま寝ていたらしくタクシーで家の前まで送ってくれたらしい
長野「あ…とえ…ご…す」
うまく声が出せず呂律が回らない僕は軽く部長に会釈して家に向かった。家まであと数歩だというのに異常に距離が遠く感じる
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
家に入ると解放感からか、ずっと押さえ込んできた吐き気に襲われる
ﾊｧﾊｧ…
僕は胃の中のものを押さえきれずに吐き出した
吐く勢いが凄くて呼吸のタイミングがわからない…
とりあえず、水を飲まなきゃ
手探りで台所の食器棚に手をかける
ーｶﾞｼｬﾝ、ﾊﾞﾀﾝ、ｶﾞﾀﾝー
食器が落ちて割れる何かが落ちる…
立とうとしたけど手足に力が入らない、
また込み上げてくる…
今日はほとんど食べ物を口にしてないはずだ
胸の辺りがｶｰｯと熱くなる
呼吸をする度、燃えるような暑い空気が体のなかを通る
その暑さとは裏腹に僕の体は冷えていくように感じた
寒い…
うぅ…
“ｶﾞﾔｶﾞﾔ、ｱﾊﾊﾊﾊ、ﾜﾊﾊ、ｷｬﾊﾊ”
さっきの目まぐるしい音が頭を埋め尽くす
気持ち悪い…
また嘔吐する
身体中が汗びっしょりで全ての水分を出しきったんじゃないかと思った
水、飲まなきゃ…
体の神経を足に集中し体を持ち上げた
ふわふわと浮いているような気がしてどんどん体が宙に浮いていいく気がし始めたとたん何かに思いきり突き放された
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作者名：みりん | 作成日時：2016年8月27日 9時
