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別に今の北山が嫌いなわけじゃない
昔と今の北山どっちが好きって問われればそりゃ昔と即答するけど。
今の北山に恋愛感情を持てない、ただそれだけだし。
それでも、思い出してしまう。
風と共に流れてくるタバコの匂いに混じった甘めの匂い。
男らしい北山には何ともミスマッチな甘めの香水。
思い出は色褪せてしまってても、香りだけはやけに鮮明に鮮やかに心に入ってくる。
無意識に記憶してる匂いが、思い出させる。
「わり、タバコやだった?」
「別に平気。」
「そ、良かった。」
つい見すぎてしまったと反省して前を向く。
と、次は何故かタバコを吸い終わった北山がこっちを見てる。
「…なに?」
「いや…藤ヶ谷は変わってねぇなって。」
『は』ってことは北山自身変わった自覚があるということなのだろうか。
でも別にそれ以上話は広がらなさそうだからそう?とだけ返せば、
うんとだけ返ってきて、また、何も無いかのように北山は前を向いた。
別にもう今の俺は北山を求めてないし、
じゃあ、あの頃に戻りたいかといえばそうでもない。
それでもやけに甘い記憶ばかり思い出してしまうのはその甘い匂いのせい。
幾度と嗅いだ匂いだから記憶に嫌ってほど残ってしまってる。
「藤ヶ谷、また来ような。」
柔らかく笑みを浮かべる、その表情はやっぱりすごく…綺麗で。
見惚れてしまうのも仕方が無い位には綺麗。
綺麗なんだよなぁ…ほんとに。
また北山を好きになる事なんて簡単だろう。
だってそれくらい北山は魅力のある素敵な人だ。
でもきっと、俺が振られておしまいその繰り返しなんだろう、
分かってるからもう、求めない。
分かってても、潮の香りに混ざった君の甘い香りが、甘さにそぐわず俺の気持ちを苦く切なくする。
北山がその香水を使い続ける限りきっと。
俺はあの頃の気持ちを忘れる事は出来ず思い出し続けていくのだろう。
またふわり、甘い香りがした。
fin.
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