その時まで . (ページ7)

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東京進出が決まってから、仕事量が増えて
忙しくなることが多かった。

タレントにとって、芸人にとって
仕事が増えることは嬉しいことやし
どんな小さい仕事でも気を抜かずに
少しでも多くの人に見取り図を知ってもらう為
がむしゃらに取り組んだ。

メディアの露出が増えて、
SNSも見てくれる人が多くなって

友達も家族も、仲の良い同期に先輩、後輩。

皆よろこんでくれた。

ただ…

「おぉ…見取り図やん、
　リリーさん、お疲れ様ーｯｽ笑」

「やっぱ東京進出して売れてはる芸人さんは
　着てる服から髪型までちゃいますね！」

「すんませんね、
　こんなケータリングしか用意出来んくて」

少し有名になってきた芸人をいびる
劇場スタッフはよくいる。

よくいるし、自分らも慣れてる。

ただ、俺らに対してのそれは
少し違うものやった。

盛「なんなんほんま、
　多ない？最近」

ﾏﾈ「上層部には報告したんですけど、
　なかなか難しいらしくて… 」

リ「なんかしつこいよな、」

盛「特にリリー、多ない？」

リ「ほんまやな、さっきも名指しやったで」

ﾏﾈ「こちらも対策しますんで
　言ってください、その… 」

リ「大丈夫や、もりしだけ見てやって
　こいつすぐ壊れんねん
　豆腐よりも女の子よりも脆いから」

盛「なんやそれ、年下の女に
　大男見てって頼むやつがどこにおんねん」

芸歴も、劇場の場数も増えて
こういうのにも慣れてはきたけど、
流石にしんどいもんはある。

リ「まぁそういうの慣れてきてこそ
　一流芸人やからな、
　むしろ売れてきたって感じすんな」

そう言って俺の背中を叩いて掴んだ、相方の手。

盛「リリー…？？」

強く掴まれた背中が
少しひりつく。

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