対立 ページ33
レギュラスの手を握って、自分の格好を見下ろした。
黒の着物に長いスカート。
我ながら動きにくい正装だ。
本当に戦う時であればこんな格好をしないのだけれど、あの人は見え張りなのか、必要でない限りこのような服で来るように命ずる。それは二十数年前も今も変わらないことの一つだ。
「兄さんに伝えました。
僕が殺すって。」
ポツリと、夢現の中漏れ出た言葉はシリウスについてのことだった。
『…そうですか。
人を手にかけるなんて、相当な負担ですよ。
なんて、何十人、何百人もの命を奪ってきた私に言われたくはないかもしれませんけど。』
あり得ないほどの返り血を浴びていたあの頃を思い出す。
「そしたらなんて言ったと思います、あの人。」
彼の瞳の奥がゆらりとぶれる。
泣き出しそうなのを堪えるのとはまた少し違う、複雑な…
ーーーーーー
じくりと熱くなった闇の印に意識を集中させて、何重にも貼られた魔法省のセキュリティをぶっ壊して、神秘部へと向かっていく。
さっき言いかけた言葉を飲み込んだレギュラスは仮面のような、笑みを浮かべながら障害物を左右に吹っ飛ばしていく。
相当に切れているようである。
「っははぁ！
遅いじゃないか」
狂った甲高い声で笑うベラさんが私の肩に腕を回してハリー達の元へと引っ張っていく。
仮面越しだからか、ハリー以外はまだ気付いていないようだ。
まだ気付いてはいけない。
それで少しでも保険ができたと安心しては命取りだ。私は敵と思わなければ。
喋り続けるルシウスさんに目を向ければ奥にいるハーマイオニーと目があった気がした。
表情が一瞬こわばり、見間違いかと思うほどに次の瞬間には普通に、こちら全体に睨みを利かせている。
「闇の帝王はご存知だ。
お前が愚か者ではないことを。
さぁ、その予言を渡すのだ、ポッター。
これまでの全てを教えてやろう。」
穏やかだった口調が一転して荒々しいものに変わる。マルフォイ家を実質人質に取られているという事実が、彼をここまで慌てさせる。
それとは対照的に、ハリーは冷静に手に持つ灰褐色の煙が入ったガラス玉に目をやり、そして正面に立つルシウスさんに目線を向ける。
「僕は１５年間もまった。
真実を知る時が、あと数日遅れたところで何も変わらない。
いまだ！」
ハリーがそう叫んだと同時に、彼の背後から赤い光線が四方八方に飛び出した。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2019年9月2日 3時
