破壊 ページ24
耳が痛む静寂の中、生徒の羽ペンの音と大時計の振り子の音だけが微かに聞こえる。
いつもは長椅子とテーブルが置かれている大広間は一人がけのテーブルと椅子が並べられていて、それぞれがテスト羊皮紙に顔を突っ込む勢いで問題を解いている。
左右前後とは２mずつは離れていて、前の少し壇になったところにはアンブリッジが大きなピンクの椅子に腰掛けている。
彼女の右側の小さなテーブルの上には紅茶と砂糖瓶、そして甘そうなクッキーが置いてある。
テストの監視をする気があるのだろうか。茶器がうるさい。
私は覚えていることをとりあえず鬼の様に書き出して、余った時間を机に肘をついて過ごす。
…爆発音が聞こえる。
そうか。
もうすぐ１１時だものなぁ…
ニンマリとしそうな表情筋に落ち着けと心の中で語りかける。
まぁ、語りかけなくても、その後起こることを思い出せば表情筋は静かになるけれど。
大広間の外からの騒音が大きくなり、アンブリッジは怪訝そうな顔でヒールを鳴らしながら扉を開けに後ろへと歩いていく。
テストを受けている６年生全員が彼女の後ろ姿を凝視する。
私の左後ろに座るロンは察したのかニヤニヤとしている。
「…これは？」
ドアが開かれればアンブリッジの目の前にはコバエ花火が飛び交う。
小さいので追い払うにも難しいし、放っておくにもスパークしながら付き纏うのでかなり邪魔なそれ。
「ヒィッ」
猛スピードで箒に乗った双子が大広間に入ってきて花火を巻き始める。
「テストの調子はどうだい！」
「相棒、もう関係ないだろそんなこと！」
あちらこちらで爆発してテスト用紙は消し飛び、アンブリッジが座っていた椅子は大破される。
アンブリッジ自身も色々な花火に追いかけ回され、音を聞きつけてやってきたフィルチは追尾型花火に追いかけ回され携帯沼地に足を突っ込んで動こうにも動けなくなってしまった。
「「さぁ、僕達の最高傑作、テスト週間終わりのお祝いさ！」」
何をするつもりだろうと、生徒達は期待に胸を膨らませて箒で舞う二人を見上げる。
彼らは拳を合わせたのち、一際大きな花火に火をつけて宙に投げた。
それはシュルシュルと煙を放ち、竜の形を取る。
アンブリッジを執拗に追いかけ回し、彼女が外に出た時...
それは四方八方に散らばって入口の壁にかけてある教育令を、アンブリッジの夢を全てズタズタに壊した。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2019年9月2日 3時
