【銀魂】Sleeping PrincessⅡ (ページ9)

今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:72,523 hit

第五十八訓ページ9

ｶﾝｯ、ｶｯ、ｶﾝｯ

『……ﾊｯ』

ﾌﾞﾝｯ、ｶﾝｯ

「ﾁｯ…」

『習ったわけでもないのにこの三殺法…ほんと、どんな剣だっつーの…』

打ち合いを開始して10分
こちらに攻めの機を与えぬようにとガンガン続く猛攻は飢えた虎のよう

ハッキリ言って出鱈目な動きで強引に攻めてきているだけ

何度も一本取るチャンスはあった
なのに

カァンッ

『(…なんて勘の鋭さっ)』

見えてない筈だ、私の剣筋は…
この男はそれを己の″勘″で防ぎきっていた

″稽古に付き合ってくれ″

昨日の夜、自主稽古終わりに土方から言われたのはそんな一言だった

浪士組として生活してきて何か月経ったか…

彼の性格を熟知している訳でもないが、少なくとも私のような女子供に稽古を申し出るようなものではなかったと思う

『(何考えてんだか…)』

「てめェ、集中しやがれっ！」

ｶﾝｯ

手を抜かれていると思ったのか更に力任せになる動き

しかしそれこそが土方の弱点だった

ｶﾝｯ

…ｶﾗﾝ

「…なっ」

『やっと一本…』

ふぅ…とため息を吐いた

弾かれ飛んでいった木刀を拾った土方は睨みながら戻ってくる

「…何をした」

『何も。そのご自慢の直感でさえ反応できない速さで弾いただけ』

凄まじい猛攻は一見こちらの動きを封じる
しかし隙が生まれやすいのが欠点だ

勘の鈍りを生み、意表を突かれた際への反応が無意識に一瞬遅れる

その隙を見てスピード勝負に出ただけだ

『(それにしても…)』

ムカつく
この男との勝負…勝ってもちっとも嬉しくない

『ねェ、土方さん』

「あ？」

『あんた…勝つ気ないでしょ』

「……」

何度もチャンスはあった
土方から一本取るチャンスだけではない

土方自身もAから一本取るチャンスはあったのだ

この男がそれを見逃す訳もなく…
剣先がAに向けられ避けきれないと覚悟した瞬間

奴の剣に迷いが生まれ、そのおかげでAはピンチを脱することができた

『(ほんと、何考えてんだか…)』

何のための稽古だ、何のための勝負だ
女子供だからと手を抜かれているのか、はたまた…

『土方さんは私には勝てない』

この人、優しすぎる…いや、ぬる過ぎる

興が削がれたAはグッと伸びをし道場を後に…しようとしたところをまたも後ろから呼び止められた

「その、今日は……ありがとな」

土方はそう残しAよりも先に道場を出て行った

何がしたかったのか…

『…やっぱ、よく分かんないや』