第七訓 ページ8
『私の剣に一目惚れって…あんた何歳…』
「ん?30だけど」
『いや30だけど、じゃないでしょ。小娘相手に何言ってんの?あんたには一体何が見えてんの?プライドないの?』
「だって君の剣術本当に綺麗だったんだもん」
『だもんじゃねーよ、三十路のおっさんが使っても気持ち悪いだけだぞ』
自分より一回りも年下の小娘に対して恥ずかしげもなく語りだした男に呆れを通り越して尊敬の念すら覚える
「でも、君の稽古から学んで自分の悪いところを直そうとしているんだがちっとも上達しなくて」
興奮して語っていたかと思えばしょぼくれて負のオーラを漂わせる男
忙しいやつだな、なんて思っていると男はガバッと顔をあげた
何やら期待の眼差しを向けられている気がして嫌な予感がする
「柊さん!是非、俺に一手ご指南願います!」
ぶっ飛んだ申し出に何か言う気もなくなり、
この人私の名前覚えてたんだなァ、なんてどうでもいいことが頭をよぎった
『まあ、私も一人稽古は飽きてきたところだし…誰かと稽古するってのも悪くないか…』
「ということは!」
『言っとくけど、加減なんてしないから…えっとあんたは…「立花っす!」
『よろしく、タチバナさん』
嬉しそうに道場内へ入って行く立花
なんか尻尾が見える…
一度頭を振り、Aも追うように道場へと戻った
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木刀を構え、前方の立花を見やる
構えはしっかりしている
今のところ隙は見られない
『どちらかが一本とったら勝ち、好きなタイミングでどうぞ』
試合が始まり、立花はゴクリと唾を飲んだ
緊張から汗が一筋垂れる
「(一瞬にして空気が変わった…)」
十代そこらの少女相手に大の男が情けないが、それほど彼女の纏う空気は違うのだ
__立花が稽古中のAを見かけたのは偶然だった
どこかの流派に所属している訳でもなく、単身でこの浪士組に志願しに来た立花はその日、派閥争いに巻き込まれるのはごめんだと人目を避け裏庭を訪れた
そこで一人素振りをしているAを発見したのだ
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作者名:あまね | 作成日時:2019年2月4日 23時