第十八訓 ページ19
『昨日言ったこと、ちゃんと覚えてる?』
「もちろん覚えてます!」
『へェ…で、これがその成果?』
「し、しししし師匠!目が、目が笑ってないです!」
一度指南を引き受けた以上はちゃんと全うするつもりだ
そして指南モード(立花命名)のAは鬼のようなスパルタぶりだった
『どこの道場に教わればそんな型になるの?基礎がそんなんじゃ上達なんて一生しない』
「す、すみません!」
かつて立花が少しの間通っていた道場はボロクソに貶され、徹底的に基礎の動きを叩きなおされるも、立花自身の呑み込みが悪くAのストレスゲージはどんどん溜まってゆく
目に見えて機嫌が悪くなっていくAだが、立花はAが今通常通り動けないことにただ安堵していた
怪我もない元気な状態だったらと思うと…
立花はブルリと体を震わせ木刀を握りなおした
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「ハァ、ハァ…」
隣で大の字に寝転び息を整える立花に『お疲れさま』と声を掛けタオルと水を渡す
「ありがとう、ございます…いつの間に…」
稽古に集中し過ぎてAが途中でこれらを取りに行ったことにも気づいていなかったらしい
『この単純な動きでそれだけバテるってことは、今まで散々無駄な動き…つまり、無意識の内に身体が楽になる動きをしてきた証拠。慣れればこっちの方が断然楽になるから徹底するように』
「はい!」
朝から稽古して気づけば太陽もてっぺん近くに昇っていた
『今日はおしまい、さっさと戻ろう』
立ち上がって歩き出そうとした時、広場の方から騒がしい声が聞こえてきた
「また、揉め事ですかね?」
『さあ…毎日毎日飽きないね、ほんと』
母屋玄関の廊下を通り過ぎる時、広場をちらりと見ると見覚えのある人物が怪我をした男に肩を貸している様子が見えた
『あれ、あの人…』
「どうかしましたか師匠?」
興味本位で玄関から広場に出てみることにする
先日の騒動の中心だったモヒカンがいつぞやの半裸男に絡んでいた
_剣抜けェェェェ!!上等だ、その素振りの成果見せてみやがれェ!!
_やらんと言ったろ魔神英雄伝ワタルとやら
_マウンテン殺鬼だ!!
_悪いがこれでも俺も芋流派の大将だ。それなりの自負ってもんがある
大将に仲間全員ひれ伏せさせる強さなんていらねェ
仲間一人護れる強さがありゃ充分だ
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作者名:あまね | 作成日時:2019年2月4日 23時