【銀魂】Sleeping Princess (ページ16)

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第十五訓ページ16

師匠！
と声を上げようとした時、木刀を持った男がAに迫っているのが目に入る

手持ちに得物がなかった立花は、急いで近くに伸びている男から木刀を取りあげ、Aと相手の間に入り込んだ

その一瞬で見た光景に立花は息を呑んだ

為す術なく木刀を振り下ろされたAは寸前で頭を庇っていた手をどかしたのだ

何故？
あのまま立花が割って入らなければ、勢いよく振られた木刀で頭を強打していた

致命傷を負いかねない絶体絶命の状況で、あのAの行動を立花は理解できなかった

まるでもういいと諦めたかのような、自分の身を蔑ろにしたようなAを弟子(自称)として許せなかったのだ

「師匠が心配です！もっとご自愛を！弟子として、あれは見過ごせません！」

まだお若いのに…とおいおい泣く真似をしてみせる立花

少し調子が戻ってきたようだ

『立花…』

食堂であれ程言ったのに、あんた何でそんな胸張って弟子だと言い張れるんだ…

ポジティブすぎる立花の言い分からして、Aを心配してくれていることは本当なんだろう

しかし、Aとしては″そんなことか…″というのが正直な気持ちだった

だって

『別に、血迷った訳じゃない。私にとってあの状況…あれが最善の行動だった』

怪訝な顔をこちらに向ける立花

『頭じゃなくて手をとっただけ。頭をやられるより、手をやられる方が嫌だった』

確かに、頭を強く打って大怪我…打ちどころによってはもっと酷いことになっていたかもしれない状況だった

けれども、Aにとっては頭を守ることよりも手を守ることの方が重要だった

侍にとって刀が魂であるように、それを握り振るう″手″は失くしてはならない何よりも大切なもの

剣を振るえなくなること…それはAにとって、侍にとって死を意味する

『私は剣と共に生き、剣と共に死ぬ。こんなことで断たれる訳にはいかない』

「そ、そんな…頭を打って刀を持てなくなる可能性だってあるじゃないですか！？…最悪死ぬかもしれなかったんですよ！？そうなったら元も子もないでしょう！」

『そうかもしれない。でも、それでも私は…この手を失うことの方が怖かった』

無意識に立花の肩を持つ手に力が入った
暫く沈黙が続き、恐る恐ると言った様子で立花が口を開いた

「真剣だったら…」

『…？』

「あれが木刀じゃなくて、真剣だったら…師匠はどうしてたんですか」