第十一訓 ページ12
「どこでもいいとおっしゃられたので!」
『……勘弁して』
頭が痛くなってきた…
一体Aの何が立花を突き動かしているというのか
何はともあれこの男、相当面倒な性格をしている
『とりあえず、この椅子に座って。じゃないと弟子なんて絶対認めないから』
そう言うや否や素早い動きで立花は隣の椅子に座った
「座りました!これで俺を弟子にしてくれますか!」
『いや、だからといって認めるなんて言ってn…』
答えるにつれ目に見えて落ち込んでいく立花はしおれゆく花のようだった
『……』
落ち着けA、これは幻覚だ
立花に垂れた耳と尻尾なんてある筈ない
ちらちらと子犬のような瞳で視線を寄こしてくる立花に、ほんの少し良心が痛んだ気がした
でも
ガタリ
席を立ったAは感情のない声で言い放つ
『私はもう、弟子なんてもたない。だからさっさと諦めて』
食堂を出て行く直前
ちらりと視界に入った立花の横顔は汁を吸った手つかずのカップ麺をただ見つめていた
____
__
_
グゥー
『……』
結局お昼も食べ損ねたAの腹は限界だった
さっきから腹の虫が鳴きまくっている
とはいえ食堂に戻る気にもなれず、仕方なく外へ食べに行くことにした
財布や笠を持って表門へ向かう
『…ん?』
屋敷前の広場に人だかりができていた
何やら騒がしい
_これで五流派目〜、ったく、もっとやりがいのある奴はいねぇのかあん?
またどこかの流派同士の争いか
毎日毎日よくやる
広場を占領し勝利の余韻に浸る流派の連中と、足元に転がる負けた流派の連中
ビビって縮こまっている連中や野次馬連中
表門へ向かおうにも邪魔で通れないぞこれ…
グゥー
相変わらず鳴り続ける腹の虫
一刻も早く店に行って昼食をとりたいところだ
普段なら目立たず面倒に巻き込まれないようにと、端の方を通って門まで向かうところだが
気が急っていたAは、笠を深く被りなおし早足で人の群れを直進した
_骨のある奴がいなくてつまらねーな全く
_マウンテンさんが強すぎるんっすよ
_マウンテン殺鬼だテメェ、殺鬼が抜けてるだろォが
_ほんと、マウンテン咲さん以上の奴なんていねぇぜ!
_殺鬼だっつてんだろーがあん?
_マントヒヒさとしさんこそ、ここのトップにふさわしいぜ!
_マウンテン殺鬼だっつてんだろーが!!原型なくなってんじゃねーか!
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作者名:あまね | 作成日時:2019年2月4日 23時