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翌日の月曜日。
普段通りに学校に行った私は放課後に楽器店へと向かった。そこは丁度私が宿泊しているサンプラザホテルの近くにあったのだけれど、先日リニューアルオープンしたらしい。同じクラスの子達が話しているのを聞いて、折角だし行ってみようと思い立ったのだ。
『.........結構、混んでるな......』
オープンして間もないためか、思ったよりも客は多かった。店内を適当に物色すれば、壁に貼ってあったチラシに目が行く。
『−−−学生料金あり、か。』
どうやらここの楽器店でも、時間毎に練習室のレンタルをしているらしい。しかも楽器店のレンタルルームにしては珍しくも22時まで可だという。ここだとホテルからも近いし、普段の練習場所としては最適かもしれない。
「−−−おや、君は......もしかして緑川Aさんでは?」
『え?あ.....はい。』
振り返れば、六十代くらいの男性が立っていた。失礼.....と言いながら、彼は懐から名刺を取り出して手渡してくれる。
旭勝義(あさひ かつよし)
この楽器店のオーナーさんらしい。彼の話では他にも都内にある十数件のレストランの経営に携わっていたり、近々東京湾にオープン予定の海上娯楽施設・アクアクリスタルの責任者でもあるなど結構な実業家のようだ。
「君の活躍は耳にしているよ。まだ若いのに大したもんだ。」
旭さんはそう言って私が見ていたチラシを見上げた。
「−−−レンタルルームに興味があるのかね?」
『はい、中々バイオリンの練習ができる場所って....限られていますので。』
そう言えば旭さんは納得したように頷き、それから傍に置いてあったチラシを一枚くれた。レンタルルームの詳細が書いてあるものだ。どうやら何種類かの部屋があるらしい。
「−−−他にもね、小さな小部屋なんだが歌い手や管楽器、弦楽器奏者等がよく利用してくれている防音室もあるんだ。ピアノがない分、安くしてある。数も多いから満室になることもそうそう無いだろう。」
いつでも利用してくれと言ってくれた彼にお礼を言うと、挨拶もそこそこに楽器店を出ることにした。
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