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「−−−しかし、お仕事ばかりで大変でしょう。なかなかボーイフレンドとも会えないのでは?」
『.........ボーイフレンド?』
あぁ、失礼と彼は笑った。森谷さんは、やや蘭先輩を気にする素振りを見せながらも声を潜ませた。駅前で一緒にいた彼だ、と森谷さんは言う。偶然にも一緒に歩いてる所を見てしまった、と。宙を逡巡して思い至ったのは、快斗君しかいないのだけれど.......どうやら彼もまた、私達の関係を誤解しているらしい。
『.....あの、彼は.....』
「そういえば、知ってますか?このホールには中々ユニークなジンクスがありましてね。」
『ジンクス?』
ええ、と彼は頷く。日付が変わる頃に一階奥のリハーサル室の鏡に向かって、会いたい人の名前を告げると、近日中に会うことができる−−−と。
『............会いたい人、ですか?』
「おや、その様子では今にも会いたい方が、どなたかいらっしゃるようだ。」
零さんを一瞬だけ思い浮かべてしまった私は、クスクスと笑う森谷さんに気づいて頬を赤らめる。それから、彼の姿を消すように瞳を閉じると母さんの笑顔を思い浮かべた。
『......もし、会えるとしたら..........私は亡き母に会いたいですね。』
そう告げれば、森谷さんは一瞬だけ驚いた様子を見せる。
「−−−きっと会えますよ。」
それから彼はニコリと笑った。
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