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その後は秋庭さんに促されるように、リハーサルの見学はお開きとなった。
『今日は遠慮しないで、じゃんじゃん食べてね!!』
「「「やったー!!」」」
約束していた子供達との食事会では、秋庭さんが帝丹小学校の卒業生であること、合唱大会に向けた彼らの練習に参加してくれることが話題となる。
「Aお姉さんも来てくれる?」
うなぎの蒲焼を頬張る元太君や光彦君が歩美ちゃんに賛同するかのように頷いてくれる。園子先輩も練習に参加するようで、夜のイブニングパーティには間に合うように配慮してくれるとのことだった。私の隣で同様に箸を進めている千秋に視線を向ければ、彼女は掌を立てて不参加の意を示してくる。
練習当日の土曜日、どうやら彼女には用事があるらしい。
『−−−って、何故、千秋も普通に食事会に混ざってるの?』
「まぁ良いじゃん。自分の分は自分で払うからさ。」
彼女の言葉に溜息をつく。子供達に向き直れば、土曜日の練習の参加の意を示した。
そして練習当日の土曜。合唱大会の課題曲は帝丹小学校の校歌だと言われた。指導役の秋庭さんは窓の外を眺めながらも、流れてくる音に耳を傾けている。調律の狂ったピアノの前奏を聴き、眉間に皺を寄せていたのがその証拠だった。
「みなぎる力で 試そう勇気を♪」
蘭先輩の伴奏に合わせてクラスの子達全員で元気良く歌い始める。
「−−−帝丹 帝丹 帝丹小学校〜♪」
『................。』
秋庭さんは歌い終わった一人一人にアドバイスを送る。彼女は、その子の良かった所と直した方が良い所を伝えていたのだが、コナン君の番になるや眉間に皺を寄せてジト目で覗き込んでいた。
「あなた、音外しすぎ!わざとじゃないでしょうね?」
指摘され狼狽え始めたコナン君を庇うように歩美ちゃんが叫んだ。コナン君は音痴なだけだもん、と。休日の音楽室が笑いに包まれる中で、私は秋庭さんに許可をもらうとバイオリンケースからバイオリンを取り出して手早く調弦を済ませる。それからコナン君を呼んだ。
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