頂への誘い ページ20
翌水曜日。
「−−−そしたら、青子の奴がさ。」
快斗君は、幼馴染だという青子先輩と授業中に織りなしてきたやり取りの数々を、面白おかしく聞かせてくれる。時折相槌を打ちながら二人で帰り道を歩いていた時だった。
『−−−あ、ごめんね、快斗君。千秋から電話だ。』
堂本ホールでのリハーサルを明日に控えた今日、"先程河辺さんが意識を取り戻した"との連絡が入った。千秋と言葉を数度交わしてから通話を切れば、そのタイミングでスマホからピーピーピーと音が鳴り響き、無情にも電源が落ちてしまう。充電切れだった。ひとまず河辺さんの朗報にホッと一息をつくと、隣を歩いていた快斗君に首を傾げられる。
『−−−事故に巻き込まれた知り合いの意識が戻ったって連絡が入ったの。まだ面会は制限されてるみたいだけど、徐々に寛解しているみたい。』
あぁ、だからそんなに嬉しそうな顔をしていたのかと彼に頷かれる。うん、と言えば、良かったなと微笑まれた。
『−−−ちなみに、明日のことなんだけど。』
学校帰りに千秋とリハーサルを見学しに行くこと、その後に知人達と食事をする予定であることを伝える。快斗君は暫く考えた様子を見せた後に、それなら....と口を開いた。
「−−−そのリハーサル会場まで、お前を送り届ければ良いな。その後はその子と一緒にいるんだろ?」
会場に着いたら俺はそのまま帰るし、と言う彼に目を開閉する。
『−−−ううん。明日は近場で千秋と待ち合わせるから大丈夫。』
「.........そうか?」
『うん、ありがとう。いつもごめんね。』
「今更遠慮すんなって。」
私は首を横に振った。
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