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「....帰るところなら、乗っていかないか?」
秀一さんの視線が私に向けられていた。
『あ、でも....』
秀一さんの言葉に戸惑い、快斗君を見上げれば彼は苦笑した。俺のことは気にせず乗れという。車の方が安心だ、と彼は言ってくれた。
「−−−そこの君も駅まで送って行こう。江古田駅で良いか?」
「......俺、自分の最寄り駅言いましたっけ?」
「−−−君さえ案内してくれれば、家まで送るが。」
「いや、駅で良いです。」
快斗君の声が引き攣っていた。
『−−−貴方は』
秀一さんの希望で、快斗君は助手席に私が後部席に乗ることになったのだけれど........運転席の後ろには既に先客がいた。
「はじめまして、お嬢さん。」
私のために席をつめてくれた男性は、50〜60代くらいだろうか。髭を蓄え、眼鏡をかけたその男性は外人だった。
お礼を言って乗り込めば、すぐに秀一さんは車を発進させる。
「可愛らしいカップルだ−−−そうは思わんかね、赤井君。」
「−−−そうですね。」
二人の会話に私と快斗君は視線を合わせあって押し黙る。私はおずおずと口を開いた。
『−−−あの、私達、付き合ってるわけじゃ...........快斗君とはただ』
「そうそう、最近知り合った友達っつーか、」
『....え、友達?』
そうだったの?と驚けば、快斗君は私以上に驚いた様子だった。
「...............え?」
『.................え?』
「−−−チョット待って、Aちゃん。俺達って友達じゃねぇの?」
『−−−でも、私達二回くらいしか会ってないっていうか......』
「...........じゃあ、ただの知り合いとか、か?それもそれで快斗君、結構ショックなんだけど。」
『..............』
「え、そこで黙っちゃうの?」
『…………』
「もしもーし、Aちゃーん?」
『や....ううん、友達!友達だよね、私達。』
「−−−だ、だな!」
『.........だね。』
私と快斗君が少々気まずい思いをしながら反論すれば、彼はおやと目を丸くした。
ハンドルを握りしめながら秀一さんがくつくつと笑い、それを見た快斗君がジロリと睨みつけている。
「それは失礼した。君を守るように立つ彼があまりにも紳士的なものだったんでね。」
私はジェイムズ・ブラック、と言って彼は手を差し出してくれたため、それに応じて握り返す。
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