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<すみません。決して片手間にしていたわけではないのですが、僕も職業柄、同時進行で情報収集をすることも多くて。最近、米花町も物騒になってきましたからね。ネットを見ていて思ったのですが、随分と事件や事故が多いな、と。>
彼の言葉に、何故かどきりとした。彼は今日の爆発事故も知っているのだろうか。どう答えようか思案していた私を遮るように彼の言葉が重なり合っていく。
<実を言うと、なかには若い学生が巻き込まれることもあるようですから、Aさんは大丈夫かなと少し心配になったもので。>
『ーーあ、』
<ですが、すみません。勿論、いち学生である貴女には関係のない話です。要らぬお世話でしたね。>
『............。』
私に関係のない話しだったら、どんなに良かっただろうか。深い溜息をつくと、性格はいざ知らず、見た目や声だけは零さんに酷似した彼の困り顔を思い浮かべてしまった。
『ーー心配してくれて、ありがとうございます。』
初めて彼に会った時は本当に零さんかと思ったくらいだ。勿論、本物の零さんは爆弾処理なんて、おそらく出来ないだろうけれど。医師だし。って、あ.....。
『ーー安室さん、近日中に、家庭教師、お願いしたいのですが。』
<.......何か、解らない問題でも?>
大きく息を吸う。心は、今決めた。
『ーー爆弾処理の方法』
<...............。は?>
私の言葉がそれほど思いがけないものだったのだろうか。暫くの沈黙の後、彼には珍しい素っ頓狂な声が溢れた。
『ーーだから、爆弾処理の方法です。やり方を教えてください。』
<ーーーーーー駄目です。>
我に返った安室さんの返答は速かった。
<そもそも、爆弾なんてそうそう遭遇するものじゃないでしょう。君には無用の知識では?>
『ーー無用かどうかは、試してみないと分からないでしょう。』
<必要ありません。そんなことを勉強する暇があったら、少しでも多くの単語や公式を暗記した方が良いですよ。学生の本分はそっちだ。>
『言われなくてもしてます。それに、実際、貴方と出会ったのもその爆弾事件の最中だったじゃない!』
<だとしても。通報して避難する、それだけでも十分爆弾から回避できます。解体する必要はない。>
キッパリと安室さんは言った。
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