検索窓
今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:110,226 hit

ページ16

火曜がやって来た。放課後、急いで文和さんの車に乗り込めば、今日のリサイタルで着用するドレスと靴を渡される。右腕の包帯を隠せるよう配慮してくれたのか袖付きのものだった。
どうやら、あの撮影時に着せてもらった衣装スタッフさんにお願いして今日もレンタルしてくれたらしい。叔母は来ていなかった。


今回も伴奏を引き受けてくれた啓太さんと共にお辞儀をすれば、大きな拍手と共に会場に明かりが灯った。
江古田のホールは最近建て替えられたばかりのようで、音響がしっかりとしている。ホール毎に調整はしているものの、それでも弾いていて気持ちの良い会場だった。


「怪我をしたと聞いたからどうなるやらと思っていたが、要らぬ心配だったようだね。」

『ご心配をおかけしてすみません。』


「いや、流石だよ。ところで、来週の土曜の夜は空いているかい?」




啓太さんは私と後ろに控えてくれていた文和さんに尋ねれば、彼は私の日程を確認してくれていた。私もプライベートのスケジュールを確認する。特に予定は入れてなかったはずだ。


「仕事の予定は今の所入ってないですね。」


「もし良かったら、鈴木財閥のイブニングパーティーに一緒に出ないか?君もそろそろ財界人と交流を持っても良い年頃だろう。」


思わず口元を隠す。鈴木財閥と言えば、私でも知っている。様々な企業の融資を行い、今や財界のトップに立っていることで有名な大財閥だ。


「いや、そんな畏まらなくても大丈夫だ。ほぼ近しい者だけのパーティの予定だし、いつものように僕と演奏してくれるだけで良い。」

啓太さんはそう言うが、近しい者だけのパーティなら余計に私は浮いてしまうのでは。あれ、そう言えば啓太さんの苗字って確か。


「もう暫く会っていないが、うちの姪の園子も確か高校生だったかな。君と年齢も近いだろうし、仲良くして貰えると僕としても嬉しい。」


「やはり、あの噂は本当だったのですね。貴方が鈴木会長の末弟だとその筋では有名でしたから。」

文和さんの言葉に、啓太さんは苦笑する。


「家名に関わらず実力で認められたくて粋がってた時期が僕にもあったってことだよ。秘密にしていても必ずどこからかは漏れるものだと知ったがね。それからは苗字も特に隠さなくなったのだけど、案外バレないものだね。」


啓太さんは茶目っ気たっぷりに私を見つめていた。

▼→←▼



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (25 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
65人がお気に入り
設定タグ:赤井秀一 , 安室透 , 降谷零   
作品ジャンル:ミステリー
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ナツメ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2019年12月9日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。