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キキキと、傍で車のブレーキ音がする。
私とコナン君は自身の服の袖を元に戻した。
「だ、大丈夫かい、コナン君!!」
優しそうな男の人だ。
「高木刑事、博士と子供達と一緒に早くこの子を病院に連れてってあげて!酷い怪我をしているみたいなんだ。」
「え、で、でも」
「事情聴取なら、僕一人で受けるからさ!」
『あ、あの…私もコナン君と一緒に聴取を受けるので。』
「ーーー分かったよ。」
高木刑事と呼ばれたその人は、哀ちゃんを自身の車へと誘導してくれた。無事に乗り込んだ彼女の姿にホッと息を零す。
「ーーー逃げんなよ、灰原。自分の運命から、逃げるんじゃねぇぞ。」
コナン君の真剣な言葉が、何故か心に突き刺さる。事情はよく分からないけれど、暗い表情をしている哀ちゃんを見れば.......私のように恐怖で身体が動けなかったのではなく、自分の意思で動かなかったのではないか−−−そんな嫌な想像をしてしまった。
「ーーークールキッド!」
高木刑事の車を見送れば、外国人の女性が彼に話しかけていた。確か、バスジャックの犯人の一人を取り押さえていた人だ。
「ーーー貴女もすごかったでーす!緑川Aさーん!」
『私の名前.....』
「バスジャックの人達ー、貴女のこと言ってまーした。でも、二人とも大丈夫ですかー?傷だらけでーす。」
「僕達は大丈夫だよ!ね、A姉ちゃん?」
彼の呼び名に一瞬動揺したものの、何とか頷きかえす。
「−−−何が大丈夫、ですか。」
そう言って、コナン君の患部の腕を握りしめたのは新出先生だ。痛みに悲鳴をあげるコナン君を見下ろすと彼は私のことも睨んできたため、早々に白旗をあげて右腕を出す。彼はどうやら医師だったようで、私とコナン君の様子に深い溜息を吐いていた。
「君達の事情聴取は、ちゃんと処置をしてからです。」
コナン君と顔を見合せると、苦笑し合う。
「はーい....」
『ーーーよろしくお願いします。』
ここは大人しく従おう、そう判断したのは同じだったようだ。
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