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バスが乗っ取られてしまった。どうやら彼らの目的は警察に捕まってしまった仲間を取り返すこと、らしい。男のうち一人は、乗客一人一人に銃を突きつけながら携帯を彼が持つ袋に入れるよう脅してくる。
「おい、ジジィ!そのイヤホンは何だ!」
「ーーーほ、補聴器です。」
後部席真ん中に座る老人が答えるや隣に座る女性が挑発とも取れる言葉を呟く。それに激怒した男は躊躇いもなく女性と老人の間の隙間に銃弾を浴びせた。
『ーーーっ!!』
その二度目の銃声に再び身体が跳ねる。
誰も怪我はしていないようだけれど、男達は脅してはなく本気で銃を撃てるということをまざまざと感じさせた。
「ーーー出せ。」
ついにこちら側までやってきてしまったその男は秀一さんにも銃を向けてくる。それを見てしまえば、思わず身体がこわばった。
「−−−ゴホ、すみません。今、携帯を持っていないんですよ。病院に行く途中だったもので。」
嘘だと察した。
「あ?ーーー仕方ねぇな、隣のガキ連れた女。お前は持ってるな?」
向けられた銃口に息を呑む。それから哀ちゃんを少しだけ遠ざけるように身体をずらせば、秀一さんと同じように否定の言葉を述べた。
『ーーーまだ、親に買ってもらってなくて』
親に買ってもらってないというのは、本当だ。このバッグに入っているスマホは隣に座っている彼にもらったものなのだから。だからこそ、この男においそれと渡すのには抵抗があった。
「−−−本当だろうな。もし、そのフックにかけてあるバッグの中に入ってたら……ただじゃおかねぇぞ。」
『ーーーっ!』
男は更に銃を寄せてきた。
「−−−あん?お前、よく見りゃどこかで見た面してるな。」
男の顔が近づいてくる。思わず肩が跳ねた。
「−−−立て。」
『……え、』
「立てって言ってんのが聞こえねぇのか!?」
私は急いで哀ちゃんを降ろして自身の席に座らせると、秀一さんの足を跨いで男の傍に寄る。
「Aさん!」
「Aお姉さん!」
光彦君と歩美ちゃんの声が聞こえた。
「こ、これ」
阿笠さんに抑えられている子供達を横目で見やりながら男に従って運転席まで歩けば、もう一人の男にも顔を覗き込まれた。
「A?−−−お前、もしかして緑川Aか。」
「最近注目されてるバイオリン奏者か。確か父親が杯戸中央病院の院長だったはず。」
「ーーーこいつを人質にしたら、たっぷり身代金がもらえるんじゃないか。」
父の話しがでて、思わず固まった。
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