明暗のわかれ道【謎めいた乗客より】 ページ41
「スキー....ですか?」
『そう、それでね−−−』
丁度出かける間際になって、次回のコンサートのタイムテーブルや他の仕事候補を持ってきてくれた文和さんに会えば今日の予定を告げた。
「けれど、スキーなんてよく許可がでましたね。」
文和さんの口元に人差し指を当てて、声を潜ませる。叔母には言ってないのだ。今日もコンサートの準備をすると説明して行くつもりだったのだから。
『文和さん、バイオリン、預かってもらえる?』
その一言で察したらしい彼は大きな溜息をついた。本当は駅のコインロッカーに預けようかとも思ったのだけれど、できれば文和さんに預かってもらった方が安心だ。
「バレたら怒られますよ。」
『だからアリバイ作りをするんでしょ。』
「ーーーくれぐれも怪我だけはしないで下さいね。今後の仕事にも影響が出るかもしれませんし、何より彼女に隠し通すのは難しくなります。」
流石にそれは分かっている。頷くと、彼に感謝を述べた。
「ーーーーーそうだ。今日はついでにこれを渡そうと思ってたんです。」
文和さんに手渡されたのは白い無地の小さな紙袋。それを開けてみれば、学業成就のお守りが入っていた。
『−−−これ』
「マネージャーとして仕事を何より優先、と言いたい所ですが........言っても貴女はきかないでしょう。昨日も遅くまで勉強してたんですか?」
文和さんに目の下のクマを指摘されれば、苦笑を零す。正解だった。
「ーーーだったら、せめて貴女の応援を。一個人としてその努力が実ることを祈ってます。」
『ーーーありがとう、文和さん。』
私は早速お守りを手持ちの鞄につける。
これから待ち合わせ場所であるーーー米花一丁目のバス停まで車で送ってくれるとのことだったので、叔母に一声かけてから二人で家を出ることになった。
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