酒に酔っても酔われるな

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映画館を出て、時間を見ると夕方の中途半端な時間で少しモール内を見たあと夜ご飯を食べようなんて話になり、先輩に手を引かれて歩く。

繋がれた時また少し驚いてしまったけど、慣れというものは怖くてこんなものか、となってしまっている自分の方に驚いている。



「面白かったですね！最後どうなるかと思いましたけどハッピーエンドでよかったです」

「あの原作者の話ドラマ化されてるのもあるんだよね。見たことある？」

「あります！私は最近の連ドラがすごく好きでした」

「げ、ドロドロのやつじゃん」

「そこがいいんじゃないですか」



好きになった人は既婚者で、それを分かりつつも付き合って、でもその奥さんも不倫してて……なんてとんでもない話。賛否両論あったけど本でもドラマでも自分では体験できないようなスリル感にちょっとドキッとしてしまう。

そんなこと、言わないけれど。

モール内を歩いていればパッと目に入ったペットショップの猫と目が合った気がして。思わず首を向けてしまったからか先輩に手を引かれてショーケースの前に来てしまった。



「かわいい〜……」

「なんかAちゃんに似てるね」

「……なんですか、それ」

「ほら、丸っこい目とか？」



まさかそんなこと言われるなんて思ってなくて口をきゅっと噤んでしまった。そんな私を見てふは、なんて笑ったあと「かわいい」なんて言うものだから一気に顔が赤くなった気がして。

まだ猫を見てたら何か言われるんじゃないかと思って、繋いでいた手をちょっと引っ張る。とにかくここから離れたくて、そんな私みたいなんて言った猫を愛おしそうに見る先輩に妙にどきどきしてしまって。



「もういいの？」

「……先輩って猫好きなんですか？」

「うん、家に三匹いるよ。見る？」

「かわいい、ですね」

「でしょ。今度ウチ、遊びに来る？」

「えっ……」



にやっと笑った先輩をみてあの時、あのホテルでの光景を思い出してしまってすぐに顔を逸らした。絶対、絶対に自分の顔がかっこいいって分かっててやってる気がする。

どうしてそんなに私のことをこうやってからかうのか理解できない。私もそこまで鈍くないから好意を寄せられてるのは分かるし、分かるけどでも「なんで私なの？」なんて思ってしまう。

確かに親やら親戚やらからかわいいかわいいなんて言われて育ってきたけど、私が特別かわいいわけではないことは分かってるし、先輩くらいならもっといい女の子がいるはずなのに。



「冗談、真に受けすぎ」

「あはは……」

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