酒に酔っても酔われるな

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お昼すぎに待ち合わせして、二時間弱の映画を見ればあっという間に夕方になってしまって

ゲームがあるとのことで二人でパーティゲームをして、お菓子を食べたり、タイミング無くすと嫌だから、なんて私が用意したケーキを先に食べた



「駅に結構いいお店あるんだけど、そこでいいかな？」

「せっかくのお誕生日なのに任せてしまってすみません……」

「いいって、家に呼んだの俺だし。忘れ物ない？荷物もった？」



そう聞いてくる先輩に何度か頷けば私の頭を撫でてそのまま玄関の方へと誘導されて。ご飯食べたら帰っちゃうのかあ、と寂しくなってしまった

そんな私を見たからか家を出てからすぐ手を繋いで、指を絡めてくるからそれだけで嬉しくなる。私って単純なヤツだな、なんて思ってしまった

他愛のない話をして、駅の方へ向かって歩いていくとお洒落なお店が見えてきて「ここ」なんて言ってそのお店にお邪魔する



「……今日、楽しかったですか？」

「え、うん。一日一緒にいられたし」

「お誕生日なのに、もっとなにかできたんじゃないかなって思ったんですけど……」



なんだか少し申し訳なくて顔も見れずテーブルに並べられたお洒落な料理に自然と目が落ちていく

そうしたら「Aちゃん」なんて名前を呼ばれてゆっくりと顔を上げた



「本当に気にしないで、俺めちゃくちゃ楽しかったし。誕生日に俺がやりたいことやったし、Aちゃんといられるだけでも嬉しいから。ね？」

「……そう、言うなら……」



お誕生日の先輩がそういうのだから、と思ってまた料理に手をつけた。


今日は本当に時間の流れが早かったと思う。いつもご飯食べたり私のバイトの合間に少し出かけたりと長時間一緒にいることが少なかったから本当に楽しくて

でもその分、別れるのは寂しくて



「寂しいの？」

「……さみしい」

「かわいいね」



駅まで送ってくれた先輩に、名残惜しくなって手を握ったままそういえば片方の手を離されて頭をゆっくりと撫でられる

先輩は、なんて意味を込めてちょっと見上げれば「俺だって寂しいよ」と言われたあと、また口が開かれる



「Aちゃん来週は？空いてる日ある？」

「ある、けど……」

「けど？」

「いま、がいいです……もうちょっと、一緒にいたい……」



週末なこともあって人通りは多く、急に恥ずかしくなってきて、俯いて先輩の私より骨ばった手をぎゅっと握りしめた



「……明日は？用事ないの？」

「あ、ない、です……」

「バイトも？……じゃあ家、戻る？」



なんて、そう言った先輩に一度だけ頷いたのだった

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