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それから二、三日
スマホはあの日のやりとり以降、新しい通知は増えていなかった。
(……まあ、そんな毎日来るもんちゃうよな)
ハレノヒのアプリと個人のLINE。
指がときどき間違えたふりをしてそっちに行きかけるのをAはそのたびにそっと引き戻した。
シフト画面を見てAは目を瞬かせる。
(この住所……)
詳細を開くと依頼主の名前のところに見慣れた文字が並んでいた。
(久しぶりや)
自然と肩の力が少し抜ける。
事務所に一声かけてからAはエプロンの入った鞄を持って駅へ向かった。
ピンポーン。
「ハレノヒ家事サポートのAです」
『はーい』
ロックの外れる音。
ドアが開くと少し伸びた前髪の向こうからいつもの笑顔が顔を出した。
「どーも、久しぶり!」
「お邪魔します。お久しぶりです」
「元気そうじゃん」
「深澤さんこそ」
スニーカーを脱いでいるあいだに、部屋の中をちらっと見る。前より少しだけ床に出ているものが減っている。
(続けてくれてる)
「今日は洗濯と掃除とキッチン周りで大丈夫ですか?」
「うん、それでお願いします。オレ、そこのソファでダメ人間してるから」
「それ、最初から宣言する人なかなかいないです」
軽口を交わしてからエプロンをつけた。
洗濯機を回しリビングに掃除機をかけているとソファの背もたれごしに深澤の声が飛んでくる。
「ねえAさん」
「はい?」
掃除機のスイッチを切ると少しだけ真面目なトーンになっていた。
「……なんか、ちょっと顔つき変わった?」
「え」
「うーん。なんか、いいことあった?」
(……バレるん早い)
Aはホースの持ち手を両手でぎゅっと握った。
「いいこと、ってほどでもないですけど」
「“ほどでもない”にしては耳赤いけどね?」
「……」
図星をつかれて思わず洗濯機のほうを見たくなる。
「この前、その」
「お仕事じゃないときに佐久間さんとスーパーでばったり会って」
「えっ」
反応がちょっと素で大きい。
「で、ちょっとだけお茶して。……それで連絡先、交換しました」
最後の一言は少しだけ声が小さくなる。
深澤がゆっくり起き上がる。
「え、連絡先?」
「はい」
「ハレノヒのじゃなくて?」
「個人のやつです」
「マジで?」
「マジです」
数秒の沈黙。
それから、じわじわと深澤の口元がゆるんでいく。
「……おーーーい」
「なんですかその言い方」
「いや聞いてないよ?そこの急展開」
「超大事なとこじゃん。仕事じゃない時間に会ったってワード、めちゃくちゃデカいからね」
「そんなに?」
「そんなに!」
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ぽんた(プロフ) - ろんさん» ありがとうございます!頑張って最後まで書かせていただきます! (12月14日 23時) (
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ろん - ぽんたさん» ありがとうございました。早速読みました!お気に入りの作品で、これからも楽しみにしております。 (12月10日 20時) (携帯から) (
レス) id: b37f710398 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんた(プロフ) - ろんさん» チェック外すの忘れてました、すみません!!!投稿したので是非読んでくださいませ。 (12月10日 19時) (
レス) id: 7020f29021 (このIDを非表示/違反報告)
ろん - 156の話が抜けているようなのですが、、、 (12月10日 17時) (携帯から) (
レス) id: b37f710398 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽんた | 作成日時:2025年12月8日 2時


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