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改札の外にひとり残された佐久間は、まだあたたかい紙コップを片手にスマホの画面をもう一度のぞき込む。




新しく追加された名前がひとつ。



“A A”




その下で、小さなトーク画面が、まだ何も書かれていないまま、静かに開かれていた。




「……さてと」




親指が、一文字目の位置でそっと止まる。




(最初、なんて送ろ)




ほんの少しだけ悩んでから、とりあえず今日は帰り道のどこかで考えることにして紙コップの残りを飲み干した。



夜のホームに吸い込まれていく人の流れを横目で見ながら、
佐久間はスマホをポケットに戻し、ゆっくりと家路についた。



 

















電車に揺られているとき、Aのスマホが小さく震えた。



画面に浮かんだ名前を見て、胸の奥がほんの少しだけ跳ねる。







“佐久間 大介”







メッセージを開く。






佐久間今日はほんとありがとうございましたー!
帰り寒くなかった?
風邪ひかないように、あったかくして寝てくださいね!








「……」


(優しいなぁ)





思わず、マフラーの中で口元がゆるむ。



指先で何度か打っては消して、
結局いちばん「いつもの自分」に近い言葉だけを残した。






Aこちらこそ、今日はありがとうございました。
無事に帰れました。
佐久間さんも、どうかお身体大事にしてくださいね。






送信ボタンを押す。



まだ一往復ぶんだけの短いやりとりなのに、
仕事のアプリじゃない連絡先に、ふたりの文字が並んだ。


ただそれだけのことが、
帰り道の夜風を、さっきより少しだけやわらかく感じさせていた。


さっき送ったメッセージの画面。
その下に、「既読」のマーク。



(……ちゃんと、届いてる)
(変なこと、送ってへんよな……)

自分の文章をもう一度読み返してみる。

(……うん。たぶん、大丈夫)

スタンプを足そうか迷ってやめたところでようやく画面を伏せた。

 


同じころ。


ソファの上で毛布にくるまりながら佐久間は暗い部屋でスマホを持ち上げていた。


(どうかお身体大事にしてくださいね、か)


声に出さずに読み上げてみて、じんわり笑う。



「……うん。大事にします」


誰もいないリビングで独り言のみたいに小さく返事をしてから佐久間はスマホをサイドテーブルに置いた。


指先がホーム画面の“A A”という名前の上をそっとなぞる。



(最初になに送ろうかな)



そう思いながらも今日は「ありがとうございました」の往復だけをそっと胸のポケットにしまって目を閉じた。

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設定タグ:snowman , 佐久間大介   
作品ジャンル:タレント
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ぽんた(プロフ) - ろんさん» ありがとうございます!頑張って最後まで書かせていただきます! (12月14日 23時) (レス) id: 7020f29021 (このIDを非表示/違反報告)
ろん - ぽんたさん» ありがとうございました。早速読みました!お気に入りの作品で、これからも楽しみにしております。 (12月10日 20時) (携帯から) (レス) id: b37f710398 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんた(プロフ) - ろんさん» チェック外すの忘れてました、すみません!!!投稿したので是非読んでくださいませ。 (12月10日 19時) (レス) id: 7020f29021 (このIDを非表示/違反報告)
ろん - 156の話が抜けているようなのですが、、、 (12月10日 17時) (携帯から) (レス) id: b37f710398 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぽんた | 作成日時:2025年12月8日 2時

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