夢に見た場所で ページ47
.
「広いねぇ……」
「そうだねぇ……」
とうとうやって来た、京セラドーム公演。
一足先にリハーサルで訪れた私たちは、お客さんが誰一人もいない会場を見回していた。最初は一人でふらふらしていたら、気づかないうちにイエニが隣にいて、私がぽつりと呟いた言葉に相槌を打ってくれた。
憧れだった。いつかはドームに、スキズだけで立てたらそれはどれだけ幸せなんだろうかと考えることもよくあった。
それに、なんと言ってもここは私の出身である関西で唯一のドーム会場だし、ここで公演をできるのはどこか少し、皆とは違う気持ちもあって。
「まだ信じられない、僕たちこんなにたくさんの人の前でライブするんだよね」
「うん……イエニ、こっち向いて」
「な、に……も〜何してるの？」
「痛い？」
「ヌナの力弱いから痛くないよ。感覚はあるけど」
マイクの持っていない手で柔らかいイエニの頬を摘んでみれば、珍しく嫌がることもなく私に頬をいじられているイエニがとってもかわいくて自然と笑顔になった。
つい、かわいいと声もこぼれてしまった。
「ヌナ、ようやく笑顔になった」
「え……」
「緊張してるの？まぁ、そうだよね。こんな大きいところ僕たちだけでやるの初めてだもんね……」
私の顔を少し覗いて「どう？ちょっとはほぐれた？」なんて心配そうに聞いてくるイエニの頭をわしゃわしゃと撫でてありがとうとだけ返した。
小さな声で「ぼさぼさになっちゃったじゃん……」と言うイエニが余計にかわいくてもっとやってやろうかと思ったら、ひょいといなくなって、そうしたらヒョンジンとばっちり目が合ってしまって。
「ソラヤ〜ん〜？イエニかわいがってたの〜？」
「そう、だからやめて〜」
「ヤ、どうして俺はソラをかわいがっちゃダメなの！？ソラはアギパンかわいがってるくせに！」
「わ、ちょっと！ひっつかないでよ！」
「ご飯食べた？なんか美味しいご飯教えて！」
「分かったから離れてよ……」
大きい手で、私がイエニにやったみたいに髪をわしゃわしゃと撫でられてから、両手で頬を包まれて犬を撫でるみたいされて、抵抗されるのも面倒でそのままでいたら「かわいい」と語尾を跳ねさせて言うから少し呆れてしまう。
でも、イエニとヒョンジニのおかげで気づかないうちに緊張が少しほぐれていたのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1210人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さとみ - ありがとございます。こちらこそ余計な事を…。すみませんでした。続編楽しみにしています。これからも頑張って下さい。 (2023年3月2日 23時) (
レス) id: 1dc70ba9d0 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ(プロフ) - さとみさん» コメントありがとうございます🙌🏻続編が出来たらリンクを貼るように書いてあるだけで、まだ続編はできてないです。紛らわしいことしてしまってすみません🙏お待ちいただければと思います。 (2023年3月2日 23時) (レス) id: 208005c528 (このIDを非表示/違反報告)
さとみ - こんばんは。 この前のお話しの最後に続編公開しましたと書いてあったのですが多分続編のってないかと思われます。これからも楽しいお話し読ませて下さい。よろしくお願いします。 (2023年3月2日 23時) (レス) id: 1dc70ba9d0 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ(プロフ) - カリナさん» コメントありがとうございます🙌🏻理想だなんてそう言っていただけて嬉しいです🥲更新頑張ります〜🫶🏻 (2023年2月23日 13時) (レス) id: 208005c528 (このIDを非表示/違反報告)
カリナ - 私の理想のお話です。本当に作ってくれてありがとうございます😊。続きが楽しみです。本当にこんな事があるといいなぁと思いながら読んでます。(叶わぬ夢)最後楽しみです。更新待ってまーふ😘 (2023年2月21日 22時) (レス) @page42 id: 28026e5e75 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さくらんぼ
| 作成日時：2022年11月2日 23時
