【29】 ページ29
「よし！おわった！」
涼介を待たせてる若干の焦りと
面倒な作業が終わった開放感から
勢い良く顔を上げると
いつもより少しだけ目を丸くした涼介と至近距離で目があう。
「…？」
涼介「な、んだよ。終わったならはよ出して帰るぞ」
その言葉に筆入れをカバンにしまって
日誌を持って立ち上がる。
.
.
涼介「A、弁当美味かったよ」
「ほんと？よかった。ちょっと気になってたの」
涼介「玉子焼きが特に」
「あは。玉子焼きはよく褒められるんだ。慧くんとか…」
慧くん、と不意に口に出して
今朝の小夜先輩を思い出す。
涼介「…あれってさ、いのちゃんにあげようとして作ったろ」
「…なんで？…別に…」
渡すことが出来なかったお弁当に
「そう」とも「違う」とも言えずに思わず口ごもる。
涼介「普通に気づくだろ、中身あいつの好物ばっかだったし」
「…でもね、出過ぎたことしちゃったなって思ってたの。小夜先輩がいるのに、ただの幼馴染が出しゃばって、って思われそうで」
涼介「まぁ、あいつ何食べてんのかわかんないくらいヒョロヒョロしてるしな」
“別に悪いことじゃないでしょ”って
笑いながら言ってくれる。
涼介「美味かったから、気が向いたら今度は俺のために作ってよ」
「それはいつでも作るよ。ありがと、褒めてくれて」
夕陽に照らされた帰り道に
涼介とゆっくり歩きながら考える。
幼馴染って、どこまでが正解なのかな。
慧くんと
幼馴染っていう近すぎる関係じゃなく
普通の先輩と後輩として出会っていたらどうなっていただろう。
少し家が近い普通の女の子として出会えてたら？
関係が崩れるのが嫌だって踏み出せない今とは違っていたかな。
けど、幼馴染じゃなければ
慧くんには見向きもされなかったかもしれない。
近づくこともできないかもしれない、ただ見つめているだけかもしれない。
だったら…だったら私は幼馴染がいい。
今のままでもいいからずっと一緒にいたいと思ってしまう私は欲張りなのかな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 87人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
nimo(プロフ) - 月夜見(つくよみ)さん» コメントありがとうございます！同じ人が大好きな仲間としてこれからも全力応援しましょう！更新頑張ります(・∀・)！ (2021年9月16日 9時) (
レス) id: 36636983cf (このIDを非表示/違反報告)
月夜見(つくよみ) - 初めまして！私も伊野ちゃんが好きな人間です！主さんの書かれていらっしゃるこの小説、迚大好きです！これからも更新頑張って下さい！！応援してます！ (2021年9月14日 16時) (レス) id: d122e2db49 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：nimo | 作成日時：2021年8月13日 20時
