ワスレナグサ (ページ14)

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ーside Ryuto

記憶喪失になっても性格は変わらず純粋なAはあの時のように恥ずかしがりながら

『りゅ、龍斗くん…』

龍斗くん呼びの破壊力やばすぎる

よろしくねって言うと俺の事を忘れている現実を突きつけるかのように敬語で返ってきた

思わず意地悪をしてやりたくなってしまった

Aの顔を覗き込みながら目を見て言って欲しいななんて言ってしまった

今までのAならきっと、いつもの事みたいに

『も〜作ちゃんなに？』って笑って流されて終わっていただろう

だけど今俺の前にいるのは俺達のことを全て忘れた白紙のA

いくらでも書き換えられる

我ながら最低だなと思いながら一生懸命Aの目を見続ける

『よろしく…りゅ、龍斗くん』

｢ふふっ、おかえり大好きなA｣

その姿がたまらなく愛おしくて何も考えず額にキスをしてしまった

顔を真っ赤にしながら俺に触れられたところを押さえるA

出会って5年こんな姿のA初めて見た

(好きな男とか彼氏の前ではこうだったのかなぁ…)

そんな馬鹿みたいなことを考えていると

『り、龍斗くんはいつも私にこんなことしてたの…？』

ドキッとしてしまった

｢うーん、逆の方が多かった気がするなぁって言っておこうかな、｣

プロ意識の高いAは絶対にそんなことしない

今までは隣にいれるだけで幸せだった

だけど俺はこの記憶喪失という最悪な状況のはずのに少し喜んで欲張りになってしまっていた

そんな自分から目を背けるかのように時計を見た

(時間そろそろやばいか)

とりあえずAにスケジュールアプリだけ教えた

『あっ、ありがとう

確認しておくね…！』

(やっぱり、記憶なくなってもかわいさって変わらないんだな)

｢うん、じゃあまた来るねA｣

って手を振ると

『じゃあね、龍斗くん』

って笑顔で振り返してくれた

今はその笑顔が痛いほど刺さる

病室を出て扉を背にして1人呟いた

｢最低だなぁ、おれ｣