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ハロウィン・アイシクル【鳴神月 灯花(トルテ)】 ページ8

私には時間が無い。

ハロウィンナイトはもう始まっている頃合だろう。
だけど、どうしても行かないといけない場所がある。

走る、走る。
ただひたすらに、普段冷たい体温が温まる程に。

走った末に着いた場所はいつもの家。
私が生まれた場所であり、彼が住んでいる家である――――特別な場所。

えっと、と必死に考えて思い出したのは小さい箱のようなモノのボタンを押す事。

それを押すとピンポーンと大きく音が鳴る。
ビックリしたが、それでも逃げずにジッと待つとやがて人が出てきた。

ああ、待ちわびていたあの人。

「え、っと。 どうしたのかな?」

困り顔で訪ねてきたその人に目を合わせるのですら難しいが今は言わなくてはいけない。

「と、トリック・オア・トリート……」

思った以上に小さくなってしまった声。
ああ、ダメなのかな。 と思った瞬間、何か薄い板のようなモノを取り出して「ああ!」と声を上げる。

「なるほど、ちょっと待ってて」

そう言葉を残して、彼は一旦家へと帰ってしまった。

でも『待て』と言われたからには待たなくてはいけない。
他者からの目線に耐えつつ、ただただ待っていると再び家から出てくる。

「飴しかなかったんだけど……」

これあげるから悪戯は勘弁ね、と握らされたのは飴玉2つ。

「あ、ありがとうございます」
「いえいえ。 せっかくのハロウィンだもんな。
楽しんでおいでね」

じゃあ、と今度こそ家へと戻るのを服の袖を持って引き留めた。

「どうしたの?」と問う彼に今こそ伝えなきゃ。

「え、えっと……」

伝えようと思えば思う程に頭が白くなっていく。
どう伝えれば伝わるか、でも私は妖怪で――――

「あ、あの……これ」

手が、身体が勝手に動く。
渡された飴玉の一つを彼に手渡していて。

「ん? いいの?」

こくり、と頷くと「ありがとう」と普段影からしか見ていないその笑顔が私へと向けられる。
それが恥ずかしくて嬉しくて仕方なくて――――気が付いたら走っていた。

ああ、でも私のハロウィンはこれで良かったのかもしれない。

さぁ、本来いるべき場所へと向おう。

心のない人形は【莉音】→←ハロウィン・プランク【鳴神月 灯花(トルテ)】



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NEW狂音 李莉V3(プロフ) - 更新ありがとうございます! (2015年10月27日 19時) (レス) id: 08ea1a59cf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ハロウィンパレード参加者一同 x他3人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/skHalloween/  
作成日時:2015年9月14日 19時

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