伸ばした手を２ (ページ10)

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No.60 ページ10

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茉「お帰り、A。話も聞かず一方的に責めて傷つけてごめんね。」

陽「わたしも、Aにいっぱい嫌な事した」

私が悪いから…と言いかけたところで周りからもごめん、お帰りと次々に声をかけられた。

滝「ほら、時間無いぞ！」

秀明くんの言葉に皆がアワアワと散る中、ポフリと何かが手に乗り、見上げてみればそれは涼太くんの手。

宮「緊張してる？」

『それなりには、ね？』

宮「頑張ろうね。」

小さく笑って頷くと間もなくです！と廊下に響き渡るスタッフさんの声

衣装に着替えると何ともいえない気持ちと高揚感に包まれた。

けれどまた演じることが出来る、踊れる歌えることが嬉しくてしょうがないと心の底から思った。

タクシーでのそれが効いたのか、それとも昔取った杵柄とでもいうのか、客席に見えるファンの子たちの顔が声援が力になり

問題もなくスムーズに終えた収録にホッと息をついた。

けど以前より体力が落ちている事実を突きつけられたような気もして少し落ち込んだ。

疲労感が半端なくて、端に用意されていた椅子に座りため息をつくと秀明くんが大丈夫か？と声を掛けてくれた。

『見てこの汗、足もパンパン。』

滝「久しぶりの仕事だし緊張もあったんだろ。」

『そうかなぁ……でも、楽しかった。』

本当に心底楽しかった。

退院してから今日まで、前と同じような生活を送っていたけれど

何かがやっぱり足りなかった。

それが何なのか、今日わかった気がする。

私は……やっはこの仕事が好き。

そして、心から笑っていられる場所もここだ。

滝「お前にとってアイドルは本当に天職だな。」

何とも嬉しそうに笑った秀明くんの手が私の頭を撫でた。