No.58 ページ8
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あの日から亮平くんからの連絡の量が半端なく増えた。
数分置きにくるそれは、さながらストーカーのようで
時間が空く時は仕事中なんだろう
最初は過保護だなぁ。なんて思ったりもしたけれど、段々と度を越すほどの量に着信音が少し怖くなってきていた。
フォンと、受信音をたてる携帯をため息とともに片手出みれば、亮平くんではなく秀明くんからで、電話できるかの文字。
大丈夫だよ。と返せば、すぐかかってきた電話の内容に、ちょっと落ち気味だったテンションが上がるのと同時に思わず立ち上がった。
身支度をおえタクシーに告げた住所は久々だったけど間違えることなく口から滑り出したスタジオの住所。
滝「ゲストにくるはずのやつがダブルブッキングで来れなくなった。体力も戻ってきてるしファンも待ってる……陽菜や茉莉には話を通してあるから、時間ないけどA今から来れるか?」
一も二もなく行く!と返事をしたものの、タクシーに乗りながら襲ってくるのは不安
ちゃんと声は出るだろうか、身体は動くだろうか、踊れるだろうか
本当にみんな、待っていてくれてるんだろうか……
『すみません運転手さん。』
「なんでしょう。」
『申し訳ないんですが、車の中で少し歌っても?』
「はい?」
不思議そうな顔をする運転手さんにこういう訳でと説明して頭を下げると、構いませんよ、と。
背筋を伸ばし発声を済ますと携帯から音楽を流しボリュームを抑えながら口にし始め身体を軽く動かした。
何度も何度もイメージしたステージ、身体をは何処と無くその感覚を覚えていたけれど、以前のように物語の主人公には成りきれなかった。
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作者名:ひな | 作成日時:2020年5月31日 3時