伸ばした手を２ (ページ35)

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No.85 ページ35

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『ねぇ、亮平くん。私もすっごく鈍感だったみたい。』

阿「え？」

『どんなに冷ややかな目で見られるって分かっていても……亮平くんのこと追いかけてた。』

ふふっと小さく笑ったAはマフラーに顔を埋めてしまい、フードに隠れて表情が見えなくなった。

『……まだまだ薬は手放せないし、また何かの拍子にフラッシュバックして迷惑かけると思う。』

いつの間にかグッとマフラーを握りしめていたAの手が震えているのに気づき、その手に自分のそれを重ねた。

阿「ね、A。顔、見せて？」

俯いていたAの顔が見えると何ともいえない表情をしていても可愛く思えるのは惚れた弱味なんだろう。

『あのね、亮平くん。』

阿「何？」

『私ね、あの……ものすごく貧相な身体してるの…。』

阿「へ？」

『だから、その……見せられる身体じゃないんだけど……それでも、そんな私でも………。』

亮平くんの彼女にしてくれますか？

全ての音が消え、Aの言葉だけが頭の中を駆け巡った。

彼女にしてくれますか。なんて、俺から告白したのに。

この子は……こんなにも愛おしい。

明るくて、弱さは誰にも見せないそんな子だったのに。

目の前に居るこの子は

今まで見たこと無いくらい自信なさげにこちらを見上げてくる、まるでウサギみたいな可愛い女の子。

そっと頬に触れれば、ほんの少しその身体が跳ねたけれど気にせず撫でた。

阿「そんなの気にしない。Aの気持ちが準備が出来るまで待つよ。何年かかってものんびり待ってるから。」

一つ瞬きをしたAの顔が花綻ぶように柔らかな笑みを浮かべ、それにつられこちらまで筋肉が緩んだのが分かった。