伸ばした手を２ (ページ23)

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No.73 ページ23

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部屋のチャイムが鳴り、ロクに相手を確認しないまま玄関のドアを開けてると、うわっと驚いた声があがった。

『いらっしゃい。』

渡「お前さ、せめてインターホンくらい出ろよ。」

『もう着くって連絡あったから良いかなって。』

マフラーに顔を埋め渋い顔をした翔太くんの後ろから防寒対策ばっちりの辰哉くんも顔を出した。

『外寒かったよね、二人ともコーヒーでいい？』

来客用のスリッパを二足だし部屋の中へと案内した。

渡「そういやA、だんだんふっくらしてきたな。」

『ホント？』

渡「お前痩せすぎなんだよ。もっと食え。」

深「翔太にだけは言われたくねぇよな。」

『翔太くんこそ食べてって思う。』

ね！と笑えば同意するように辰哉くんもこちらを見て頷きながら笑った。

翔太くんはその様子に少し不貞腐れながらもマグカップに口をつけていたけど口の端が上がってるの見えてるよ。

深「そうだ、Aにお土産あるんだった。」

好きだったろ？とケーキの箱を乗せ中を見ると大好きなイチゴのタルトが見えた。

『え、待って…大好き、ありがとう！』

渡「喜びかたガキかよ。」

深「味わって食べるよーに！」

冷やしてくる。とキッチンに仕舞えば来客を知らせるチャイムが鳴った。

なに、誰か来る予定あんの？なんて会話をしつつ玄関へ。

何か頼んだ覚えはないしな、とドアを開けた。

『亮平くん…』

阿「急にごめん……ちょっといい、かな？」

病院に迎えに来てくれた時と同じモスグリーンのマフラーをした亮平くんが立っていて、寒いからだろうか耳がほんのり赤く何故か視線が定まっていなかった。