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「いのちゃん、なんかあった?」
心配そうに顔を覗き込んでくる大ちゃん。
「‥何でもないよ、大丈夫」
俺がそう答えると、納得した顔はしなかったけどそっか、と言ってくれた。
薮とは、一度も会っていない。
というか、俺が一方的に避けている。
今は、薮には会いたくない。
彼の顔を見てしまうと、自分の気持ちをすべて言ってしまいそうで怖かった。
薮にはあのかわいい恋人がいるのに。
「...大ちゃん、俺保健室行ってくる」
「うん。休んでおいで」
次の授業は物理。
薮の授業のときは逃げるように保健室に行っていた。
察してくれた大ちゃんは、優しく俺の頭を撫でる。
泣きそうになったのを堪えて、教室を出た。
「・・・あ」
俯いて歩いていると、目の前に出来た小さい影。
「いのお、先輩?」
くりくりの目が、俺を見つめる。
「僕、1年のちねんゆうり、です」
俺が、薮の次に会いたくなかった人。
「.....俺、保健室行くから、ごめん」
ちねんくんの顔も見れなくて、逃げるように通り過ぎようとした。
した、‥‥けど。
ぱしっ、と手首を掴まれて
ちねんくんが真っ直ぐに俺を見つめているのがわかる。
「あの、宏太と僕───」
付き合ってますから。
そう告げられるのが怖くて、掴まれた腕を振りほどいた。
「っあ、せんぱ、」
「知ってる、から!もう薮には、近づかないから....」
そこまで言って、耐えられなくて逃げるように足を進めた。
いろんな人にぶつかって、溢れた涙を隠すように俯いた。
◇
「いのちゃん、大丈夫?」
雨上がりの陽射しが差し込む保健室。
暖かいタオルを目に当ててくれながら、光先生が言う。
「痩せたし、あんまり寝れてないんじゃない?」
肝心なことは聞いてこないけど、俺の心配をしてくれてる。
大人しく首を縦に振ると、眉を下げて困った顔をした。
「ベッド、使っていいから。ちょっと寝なさい」
「‥‥‥うん」
渋々ベッドに横たわると、優しくお腹をポンポンしてくれる。
それが心地よくて安心して、いつの間にか眠りについていた。
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りこ(プロフ) - 裕伊さん» 裕伊さん、お返事遅くなってごめんなさい〜!本当に嬉しいお言葉ありがとうございます(T_T)裕伊さんのコメント本当に嬉しくて天に昇れそうです...。初夜も書くかどうかすごく迷ったのでそう言って頂けると嬉しい限りです(T_T)本当にありがとうございました!! (2017年9月16日 21時) (レス) id: 17e05a7ed7 (このIDを非表示/違反報告)
裕伊(プロフ) - りこさん〜〜!(;;)このふたりが好きすぎて、また読めて幸せですありがとうございます…!!相変わらずぴゅあな伊野尾くんがかわいくてかわいくて悶えました…あとはやぶ先生の理性によくがんばった!って褒めてあげたいです…(誰)幸せ初夜までごちそうさまでした!笑 (2017年8月18日 5時) (レス) id: 9c3cb87535 (このIDを非表示/違反報告)
りこ(プロフ) - 侑葉さん» 侑葉さん、ありがとうございます!ひたすらピュア恋愛をイメージして書いたのでそう言っていただけて嬉しいです(^^)胸きゅんもして頂いて嬉しいです〜!また番外編もよろしくお願いします! (2017年7月3日 20時) (レス) id: 17e05a7ed7 (このIDを非表示/違反報告)
侑葉(プロフ) - 今日見つけて一気に読んじゃいました 笑笑 薮ちゃんの大人な雰囲気と伊野尾ちゃんのピュアさがマッチしてとても面白かったです!伊野尾ちゃんと一緒に胸きゅんしちゃいました (2017年7月2日 12時) (レス) id: e04bce508f (このIDを非表示/違反報告)
りこ(プロフ) - あささん» あささん、ありがとうございます〜!そう言っていただけて本当に嬉しいです...!!ピュアなやぶいの自分で書いても可愛いな〜と思ってしまいました(笑)またアップすると思うのでよろしくお願いします〜! (2017年6月26日 20時) (レス) id: 17e05a7ed7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りこ | 作成日時:2016年5月25日 16時