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ヒョンはAの頭を撫でるだけで、曖昧にしか答えてくれなかった。それでも、握り返してくれた手が、Aはここにいるって教えてくれる。ちょうどこっちに歩いて来たジョンウが、眠っているAを見て、見たことないくらいに柔らかく笑った。
「A、やっと寝れたね」
『うん、やっと』
「マーク、20分後って言われた？」
『何でわかったの？』
「僕とアイス食べる約束してるの」
時計の針が動いて、Aを起こす時間になったけれど、今起きたら、次に眠るのはいつになるんだろう。それでもあまりにも静かに眠るAが、なんだかこのまま、戻ってきてくれないんじゃないかって不安になって、握った手に力がこもってしまう。ゆっくりと開いたAの目が、手を握った先の俺を見て、ゆっくりと笑った。
「どうしたの？」
『ううん、おはよう』
「うん、おはよう」
『あ、ジョンウがあっちで待ってるって』
「マークは行かないの？」
一緒に行こうと立ち上がったAが、繋いだままの手を引っ張って俺を立たせて、いつの間にか追い越していた背が、手の大きさが、何もかもが、昔とは違うんだと思ってしまう。
お互いに小さくて、何も知らなかった頃とは、俺たちは、あまりにも全てが変わってしまったのだと。それでも変わらないのはAの隣に俺がいることなのに。
『A、』
「うん？」
『Aの手、俺より小さいね』
「それは当たり前じゃない？」
『でもどこにいても、俺がAの手を掴むから』
「…いきなりどうしたの？」
『それだけは覚えててね』
アイスパーティーだよ！とジョンウが呼びに来て、Aの反対側の手を握ってぶんぶんと振るから、Aが笑う。もしも、どこかに行きたいと、逃げたいと言うAの手を俺が掴んだら、Aは、どんな顔をするんだろう。
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作者名：yom | 作成日時：2021年10月3日 16時
