�� ページ43
○
「Aの好きなジュース」
「ほんとう？ジュース？」
「うん、飲んでみて」
さっきよりもぼんやりとして、気を抜いたらグラスを落としそうだ。こんなにおぼつかないAを見たのは初めてで、なんだか大変というよりも珍しくて面白い方が勝ってきた。これも絶対言わないけど。今もまだ慌ててるし。
「…ジュースの味しないね」
「おかしいなあ、ジュースのはずだけど」
「そっちが良いな、色が付いてるやつ」
「これはほら、俺が飲むやつ」
「オッパの？」
「うん、Aのはそれ」
「……Aもそれが良いなあ」
落ち着こうと水を飲んだドヨンイヒョンが、勢いよく咽せた。ヒョンたちはにんまりと笑っているし、ヘチャンとマークが起きていたら、もっと騒がしかったんだろうなあ。勿論目の前で言われたユタヒョンの耳は真っ赤だ。俺はその、ちょっぴりドキッとした。そう、ほんのちょっと。
「ジェヒョナ」
『何？』
「俺、これどうすればいい？」
『どうすればって…』
こっちは大騒ぎだというのに、Aはもう気持ち良さそうに眠っている。寝ちゃったの〜？と頬をつまんだジョンウにも気付かずに、ヒョンの肩に頭を乗せて、もう夢を見ているのかわからないけれど、少しだけ口角が上がっている。
「寝てるよな？これ」
『ドヨンイヒョン、A寝ちゃった』
「…とりあえず部屋、俺の部屋でいいや」
『A、部屋行くって、』
「……うん、オッパおやすみ」
ヒョンに手を引かれて部屋に歩いていくAを見ながら、外で飲ませたら大変だなあ、なんて呑気なことを考えていた。次の日ヒョンにあんまり外でお酒飲まないでねと言われたAが、「わたしあんまり飲んでないよ」と昨日の記憶をすっ飛ばしていたのは、ちょっと面白かったけど。
『A、ケーキ冷蔵庫にあるよ』
「本当？昨日知らない間に寝ちゃってたから」
『本当に何にも覚えてないの？』
「……何かした？」
『ううん、秘密』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 626人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：yom | 作成日時：2021年10月3日 16時
