アイスクリームマジック ページ33
○JISUNG
「うわぁん！ヌナぁ！」
そう言ってヘチャニヒョンが走り出したのと、そのヘチャニヒョンとじゃれ合っていた(そういう言い方が正しいと思う)マクヒョンが走り出したのは、どっちが早かったんだろう。Aヌナが顔を上げて、マクヒョンの両手で顔を覆われたままぴたりと止まる。
「…なに？」
「ヌナ！ヌナだ！ヌナ！」
「ヘチャナ！Aにはダメだよ」
「わかってるもん、わかってるから離してあげなよ」
「あっ、ごめん」
「ううん、2人で遊んでたの？」
ヘチャニヒョンのほっぺたを撫でて、遅れてすみませんと先生に挨拶をしながら、僕たちに手を振るヌナの髪が長くなっている。隣に座っていたジェノヒョンは、さっきから口を開けっぱなしだ。
「Aヌナ、いつ髪変わったの？」
「昨日の夕方だよ」
「だからマクヒョンたちは驚いてないんだ」
「夜ご飯一緒に食べたからね」
年末の舞台に向けて、僕たちは一緒に練習をしている。ヌナはもうひとつ1人でやるステージがあるから、今日も急に衣装合わせが入ったらしい。らしいと言うのは、ヘチャニヒョンが僕にそう言っていたからだけど。よし、と立ち上がってヒョンたちの練習に加わったヌナを見ながら、やっとジェノヒョンの口が閉じる。
『ヒョン、大丈夫？』
「何が？」
『ずっと口開いてましたよ』
「それはチソンアも同じでしょ」
『ええ、』
ヘチャニヒョンにくっつかれながら髪をまとめて、音楽が流れる。ヌナが振り返った瞬間に髪の毛がふわりと舞って、思わずわあ、と声に出してしまった。自分は髪が長くなったことがないからわからないけれど、実は思い通りに動かせたりするんだろうか。
「ほら、口開いてるじゃん」
『こ、これはその、ヌナの髪が』
「ヌナはやっぱり魔法を使えるんだよ」
『魔法？』
「ヌナだけが使える魔法」
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作者名：yom | 作成日時：2021年10月3日 16時
