ライラック ページ14
○TAEYONG
「わ、」
『どうしたの？』
「お、おいしくて」
僕の隣で目を大きく見開いたAにユタがけらけらと笑って、自分の分をAのお皿に乗せる。たこ焼きは韓国にもあるけれど、ユタの育ったところで食べるものとは全然違って、Aはまだ目をキラキラとさせている。
バッサリと切った髪は日本のファンの人たちにも好評で、会社はまた少し頭を悩ませている。結局、髪が長くても短くても、Aの人気が落ちることなんてないのだ、絶対に。AはA自身で、自分の居場所を確立してきたのだから。
「美味しい？」
「うん、ジョンウもほら、食べてみて」
「…わ、美味しいね」
「でしょう？」
満足そうなAに、自分が作ったん？とユタが笑う。オッパは美味しいものたくさん食べてたんですねと言いながら何個目かわからないたこ焼きを食べて、隣にいたドヨンに口を拭かれていた。髪を切ったときから、もしかして反抗期かな？と言っていたけれど、そう言われたAがめちゃくちゃ呆れていたことは、まだ内緒にしていた方が良いのかな。
『Aはさ、ドヨンイが面倒だなって思ったことないの？』
「…何で聞かなくて良いことを聞くの？」
「全く無いって言ったら嘘になりますけど」
「…えっ？」
「でもオッパと会わなかったら、わたしはここにいなかったから」
ソファーで寝てて良かったとドヨンの方を向いたAが、涙目になったドヨンを見て、「今ちょっと面倒だなって思いました」なんて言うから、向かいに座っていたマークが笑う。でも確かに、Aがあの場所で眠っていなくて、ドヨンが練習室に連れて来なかったら、俺たちはどうなっていたんだろう。考えるだけで、少しだけ怖くなった。
「そもそもドヨンイはAだって知ってたん？」
「ううん、でもテンが言ってた子かなって」
「Aと僕の運命的な出会いなんだって、テンオッパにそう言われました」
「テンヒョンに怒ったAの話？」
「マーク、誤解するような言い方やめてね」
「でも機嫌悪かったんでしょ？」
「起きたら生きてたって言われたから、よくわからなかっただけだよ」
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作者名：yom | 作成日時：2021年10月3日 16時
