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「オッパ、携帯持ってますか」
「置いてくるの忘れたからあるよ」
『ドヨンイにかけてくれる？多分探してるから』
「あ、もうかかってきてる」
Aならここにいると場所を説明してすぐに、慌てたドヨンが走ってきた。どこ行ってたのと聞く顔は、怒っていると言うより、心配している顔だ。
「戻ろう、テヨンイヒョンも慌ててる」
「あ、携帯預けちゃったから」
『まあでも、渡しておいた方がいいかも』
Aの背は、女の子と並べば高いほうだけれど、俺たちみたいなのに囲まれてしまえば、あっという間に姿は見えなくなってしまう。帰りますとやっと少しだけ笑って、ドヨンイに手を引かれるように輪を抜けて、Aがこっちを向いて手を振っている。今度は、ちゃんと席に戻れるかな。
「迷子のAちゃん、最近無かったのに」
『この環境だし、ほら、』
「そういえば寝れないって言ってたな」
『寝るのが1番好きな子なんだけどね』
年が明けて、いつにも増して休みもないくらいに動き始めてから、Aがこっちの宿舎で夜を過ごすことが多くなった。俺やドヨンが話をしたり、テヨンが話し相手になったり色々してみたけれど、移動の車の中でしか、最近はAが眠っているところを見ていない。A自身は、自分の部屋で寝ていると言うけれど。
「おかえりなさい」
『…挟まれてるの？』
「今日はもう俺たちの間から離れちゃダメ」
「そうらしいです」
テイリヒョンとジェヒョンに挟まれて座っているAは、応援棒を両手にぎゅっと縮こまっている。ジョンウがAの口にお菓子を突っ込んでいるけれど、ずっと口を動かしているAが、なんだか小動物みたいに思えてきた。
『今日は寝れそう？』
「…多分、大丈夫です」
「A〜僕とお菓子パーティーしようよ」
「…今一応制限中なんだけど？」
「じゃあ健康なものを食べるパーティーでもする？」
「ジョンウがパーティーしたいだけでしょう」
「バレた？」
やっぱりAは、笑っている顔がよく似合う。Aもう迷子にならないでねとファンの人たちにまで言われたAが目を丸くして、写真に撮られたそれが電波の波に乗ってテンから大量に電話がかかってきて、約束したからとご飯の写真を毎日送っているのは、まだ俺たちだけが知っている話。
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作者名：yom | 作成日時：2021年10月3日 16時
