�� ページ37
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「A、噛むのやめて」
「ほらA、ティッシュ」
どんなに辛くても、いつからか、わたしの目から涙が流れることは前よりも少なくなっていた。今だって大声で泣いてしまいたい気持ちはあるのに、ドヨンオッパから受け取ったティッシュを握ったまま、自分の手に力を込めていることだけがわかる。
『…オッパたちには迷惑かけないから』
「Aのことで迷惑になることなんてないよ」
『でも、』
「A、お願いだからそれ以上は言わないで」
ドヨンオッパの目から、ぽろぽろと涙が落ちる。前にオッパがしてくれたみたいにティッシュを渡したら良いんだろうけれど、わたしの体は動かなかった。ドヨンアが泣いてどうするのとテンオッパが言いながらタオルを投げて、涙で濡れたオッパの手がなんとかそれを掴んだ。
「…Aの前で泣くつもりなかったのに」
『オッパ、えっと、』
「でもAがいつまで経っても泣かないから、俺を見てつられて泣くかなって思ったんだけど」
『…わたしが泣いたらどうしてたの』
「泣き止むまで隣にいるよ」
次の日、会社がファンの人たちに向けて出した文章は、うちの会社を知っていて、でもわたしをあまり知らない人のもとにまで届くような、一歩間違えれば会社ごと傾くような、「NCTにはAが必要だ」と、「もしそれを悪く言うのなら、それはファンではありません」と、何回読んでも自分のことが書いてあるとは思えなかった。だってこれじゃ、逃げたくても逃げられない。自分があまりにも、大切な存在なのだと言われているようだったから。
「A、出れる？」
『大丈夫です』
「じゃあ行こうか」
『…今ですか？』
「Aのことは絶対俺が守るから」
テヨンオッパがわたしの左手をしっかりと掴んで、車を降りて歩いていく。たくさんのカメラが向けられた、入り口までのわずかな道で撮られた写真は、何時間後にはたくさんの情報の波に乗りながら、わたしたちの知らないところまで流れていくんだろう。入り口のドアが閉まって、緊張したとオッパが胸を押さえた。
『オッパ、ありがとう』
「Aの目が腫れててよかった」
『それって良いこと？』
「泣きたい時は泣いて、笑いたい時に笑えば良いんだよ」
楽屋に着けば、ヌナおはよう！とヘチャンがパタパタと走ってくる。じわりと滲む視界を拭って、駆け寄ってきたヘチャンを抱きしめた。
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yom(プロフ) - 花藤さん» とても綺麗な言葉で表現していただきありがとうございます…！頑張ります！ (2021年8月15日 11時) (
レス) id: 0ce65e6476 (このIDを非表示/違反報告)
花藤(プロフ) - 淡々とした描写の中にきらりと光るそれぞれの感情と、おだやかな余韻がとっても素敵だと思います。一気に拝見しました。更新とっても大変かと思いますが、応援しています。 (2021年8月15日 2時) (レス) id: d70a6e9ed7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：yom | 作成日時：2021年8月10日 18時
