【イナGO】お嬢様のお気の召すままに。【天河原】２ (ページ30)

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第六十話ページ30

「ん…」

一定感覚で来る振動で目が覚める。

うっすらと目を明けてみると夕日が眩しくて、目をぎゅっと瞑る。

西「あっ！起きたよぉ」

うざったらしい語尾をのばした声が耳元で聞こえた。

うるさく感じて、もたれている壁に顔を埋める。

…壁？

喜「おはようございます、お嬢様

って言っても、もう放課後ですけれど」

寝ぼけた頭をフル回転させ、自分の状況に驚いてガバッと体を起こすとそのまま後ろに倒れそうになって慌てて喜多の首に腕を回す。

驚きすぎてドキドキと心臓の音が耳元で聞こえてる錯覚に陥る。

どうして、喜多におんぶされているの？

喜「お、お嬢様…首が絞まってしまいます

少し力を緩めてくださいっ」

立ち止まって少し顔をこっちに向ける喜多の首から腕をのけて、肩に手を置く。

さっきまで、まだお昼で授業中だったはずなのに…っ！

星「よく眠っておられましたよ。

昨夜眠れなかったのですか？」

西「ひっ…まさか喜多…」

喜「待て待て誤解だ！何もしていない!!

お前たち知っているだろう!?」

きゃ～っと叫びながら西野空が小走りで少し前に行く。

全く、と呆れたように喜多が小さく呟いた。

「なんで、私…」

隼「先生が起こしたけどお嬢様が全く起きないから喜多がおぶってくれてんの！」

私の鼻に人差し指をちょんっと当ててニッと笑う隼総。

いつもの隼総で、ほっとする。

疲れているせいか、歩きたくなくて喜多の背中に体を預ける。

今日だけ。

今日だけ、仕方ないから喜多に甘える。

喜多の匂いは落ち着くから。すりっと少しだけ喜多の背中に頬ずりをする。

「今日はなんだか疲れたわね。」

西「一日中寝てばっかだったけどねぇ」

「…今ので私、西野空の事嫌いになりそうだわ」

西「えぇっ！ほんとーのことじゃん!!」

腕をぐっと下に下げて地団駄を踏む西野空を見てクスッと小さく笑う。

私の笑い声に、四人の動きがピタッと止まった。

多分、初めて四人の前で笑った…からだと思う。

お昼の時に感じなかった心地よさで、機嫌が良いから。

四人のぽかんとした顔を見て頬を膨らませる。

私だって、笑うときは笑うわ。

「とにかく、私は歩きたくないの。

このまま連れて帰って頂戴、どうせあなた達と帰る場所は一緒なんだから」

喜「はい。かしこまりました、お嬢様」

クスッと喜多が笑って私をおぶったまま、家に向かって歩き始める。

初めて一緒に歩く帰り道。

綺麗な夕日が、私たちを照らしていた。