【イナGO】お嬢様のお気の召すままに。【天河原】２ (ページ22)

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第五十二話ページ22

―——10年前

春「こんにちわ、Aちゃん」

「春奈ちゃん！」

ベッドの上でぬいぐるみを抱きかかえながら座っている少女の前に立って挨拶をする。

彼女は天野Aちゃん。

天野財閥のお嬢様。

お兄ちゃんを通して初めて会った女の子。

体が弱いせいで中々ベッドから出られないらしい。

春「今日は体調が良さそうね、何かいいことでもあったの？」

「えへへ、わかる？」

ぬいぐるみをぎゅうと握りしめて笑うAちゃん。

「今日はね、またあの子たちに会ったのよ！

私にサッカーって言うのを教えてくれた子たち！

パパのお友達の子供…って言ってた気がするわっ

緊張して、全然お話しできなかったけどいっぱい話しかけてくれたのよ」

えへへ、と嬉しそうに話すその顔を見て、ほっこりする。

Aちゃんはお嬢様と言うよりお姫様みたいに育っていると思う。

可愛くて、小さくて守りたくなる女の子。

Aちゃんがテレビに映っていた豪炎寺さんに会いたい、と言ったことから私たちとの関りが増えた…と思う。

天野財閥はあまり他の財閥と関りを持たない。

強い権力を持っているからこそ、馴れ合いをしない。

その理由は、Aちゃんが関係しているのは言うまでもない話。

だからこそ、あの子たちはよくこの子と知り合えたなと思った。

春「喜多君たちの事？」

鞄を置いてベッドの傍にある椅子に座りながら問いかけると、Aちゃんは目を見開いてそう！と叫んだ。

「そう！そうよ、その子たちよ！

覚えても名前をすぐに忘れちゃうの、覚えておくのって難しいわね」

指遊びをしながら答えるAちゃんを見て頬が緩む。

Aちゃんは嬉しそうに今日あったことを一つ一つ思い出しながら話してくれた。