シルエット

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「ええな。
新しいのん買おうや」


声かけるタイミングなんかなくて。


仕方なく、少し離れて、二人の後をつけてく。


ビルん中の、個性的な洋服屋。


りゅーせーと一緒の神ちゃんは、
ほんまに楽しそうや。


俺にはよう分からへん、
派手な色の服を手にしては、
鏡の前で合わせてる。


その様子を洋服が並べてある棚の影から、
こっそり盗み見てる。


神ちゃんは何でも似合うなあ。

ほんまに可愛ええ。


それに比べて。

蹴球部て、でかでかとプリントされてる練習着のTシャツに、黒ジャージのズボン履いてる俺は、
思いっきし場違い。

なんか自分が恥ずかしなってきて、居心地悪い。


こんな事、地元じゃ感じた事なかったのに・・・


「いらっしゃいませ。
何かお探しですか？」


今時な店員のお兄さんに声かけられて、
緊張のあまり、


「いえっ。僕は、見てただけでっ」


なんとか断って、その場から逃げ出してしもた。


店を飛び出したけど、
ビルの中は人だらけ。

人に押されるように、
下りのエスカレーター乗ったとこで。


「しげっ！待って！」


背中に、神ちゃんの声が聞こえた。


気付かれてしもた。


「しげっ、なんで逃げるねん！
俺に会いに来てくれたんやろ？」


会いに来てん。

会いに来たんやけど。


神ちゃんが本来居るべき場所を目の当たりにして。


声かける勇気なんか、
すっかりなくしてしもてん・・・

　

神ちゃんは、別の世界の住人。


運命の悪戯で、俺の目の前に現れてくれた。


けどそれはほんのひと時のこと。


俺に残された時間は、あと少しだけなんかもしれへん・・・


なんでやろう。

そんな予感がしてた。

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