シルエット

５ ページ17

「ごめん。
怒ってんちゃうねん。
神ちゃんに帰らんといて欲しいだけやねん」


しげの優しい声に、
ほっとして、涙が出そうになる。


「けど・・・俺、邪魔やろ」


「なんでやねんっ。
つべこべ言わんと、行くで」


しげに、強引に路地から連れ出されて。

そのまま、ぐいぐい引っ張られて、
半分、引きづられるようにして歩いてる。


神社の鳥居の近くまで戻って、
やっと立ち止まってくれた。


「ごめん。
神ちゃん、下駄やのに、歩きにくいよな」


しげも下駄やのに、
慣れてんのか、平気みたいや。


「もうちょいゆっくり歩いてや。
階段上がんねやろ？」


「うん。
境内に出店出てるからっ。
金魚掬いしよ」


「うん」


しげ、言うたくせに、
ちょっと黙ってさ。

俺をじっと見てる。


「そんな見られたら、穴開くわ」


「神ちゃん、浴衣やから」


そう言うてる、
しげのほっぺた、

なんでか、
真っ赤っかやねん。


「はっぴは恥ずかったから。
ごめんな。
せっかく持って来てくれたのに」


「ううんっ。
浴衣のがええ。
めっちゃええっ。
可愛いっ」


女の子褒めるみたいに言うから。

俺が恥ずかしい。


「何言うてんねん」


「神ちゃんてなんでそない色白いん？
俺の周りの人で一番白い」


「確かに、ここの村の人、
みんな真っ黒に焼けてるもんな」


「神ちゃんて、
真っ白で、なんか綿菓子みたいや。
金魚掬いした後、綿菓子食べよな！」


「なんで俺が綿菓子やねん」


呆れたふりして笑って。

無邪気なしげに腕を引かれて、
歩き出した時。


隅っこの方で、
成瀬が女子たちに慰められてるんが、
目の端に映った。

泣いてるみたいや。


しげ、なんて言うて断ってんやろ・・・

そんなん詮索するん、あかんかな。


階段、俺に気を遣ってか、
しげはゆっくり上がってくれる。

そんだけやのに。


胸がきゅうって苦しい。


なんで、なんでって、頭んなかで、

その言葉がくるくる回ってるけど、

今は考えんの、やめよう。




まずは、金魚掬い。

意気込んでたけど、
しげ、すぐに網を破ってしもた。

けど、めっちゃ負けず嫌いやねん。


真剣な横顔が、
めちゃくちゃ男らしい。

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