３３ ページ33
１５分ほどして長澤さんが旅館の送迎用バスで帰ってきた。
一番後ろには杉元くんのロードバイクが見えて心配になったけれど、バスが止まるとふらつきながらも杉元くんは自分でバスを降りてこっちに歩いてこようとしている。
慌てて駆け寄ると、私に気づいた杉元くんは苦笑いして力無く笑った。
「大丈夫･･･？あ、これ、水分補給してね？」
「あ、･･･うん。ありがとう。はは。情けないねぇ･･･。僕は･･･」
悔しそうに唇を噛む杉元くんに、私もきゅっと胸が痛くなった。
杉元くんに手を伸ばしてタラリと垂らした手を握った引っ張ると、驚いたように肩をビクリと跳ねさせたけれど、素直に私に着いて来てくれる。
横山さんのいるベンチまで杉元くんの手を引いてベンチの前で手を下に引くと、私の言いたいことが分かったのか、ベンチに座ってくれた。
手渡したドリンクを一気に飲んで、強張っていた表情が幾分か和らぐ。
「すごいね。杉元くん」
「･･･え？僕が･･･どうして･･･？」
「だって、私だったら絶対最初の一周で置いていかれてたし、今の私、頑張ることさえしていないもの。杉元くんは頑張ったもん。すごいね」
「･･･っ。あ、りがとう･･･っ」
目を見開いた杉元くんは、次の瞬間にはクシャリと情けない笑顔で泣き笑いしながらも微笑んでくれた。
一緒にみんなにおかえりなさいしようねと言うと、杉元くんは微笑んで頷いた。
「子供なのに大人びたことを言う子だね。君は」
「･･･そう、ですか？」
本当は高校生だからと言いたいけれど、私の判断では何も言えないから言葉を濁す。
そうして待っていると、みんなが帰ってくる時間になった。
トップは･･･福富さんが金城先輩に僅差でゴールした。
その後ろから少し遅れて新開さんと今泉くん荒北さんと、みんながゴールしていく。
慌ててたくさんのタオルを抱えて走り寄ったら躓いてしまう。
あっと思った時には私はポフリと誰かの体に飛び込む形で受け止められた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 190人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瑠璃色の夢(プロフ) - ダリアさん» いつも嬉しいコメントをありがとうございます＾＾素敵なお言葉をたくさん頂けてモチベーションを保てています。本当に感謝感激です。今後も頑張っていきますのでよろしくお願いいたします(*^^*) (2019年8月18日 1時) (
レス) id: 86b4dd6b0b (このIDを非表示/違反報告)
ダリア - これを見ると疲れが癒されます。姫ちゃん可愛すぎです! (2019年8月18日 1時) (レス) id: 7c4b8b3529 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃色の夢(プロフ) - 美月さん» 嬉しい感想ありがとうございます♪応援と温かいお言葉、とても励みになります＾＾今後も頑張っていきますのでよろしくお願いいたします(*^^*) (2019年5月3日 10時) (レス) id: 86b4dd6b0b (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - はじめまして!第１期から見させてもらいました!もの凄く面白いです!過保護な自転車部員は見てて凄く楽しいです!この作品大大好きです！応援してます!! (2019年5月3日 9時) (レス) id: 001893ea4c (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃色の夢(プロフ) - かあさん» 嬉しいコメントありがとうございます＾＾確かにベタですよね。ですがなかなか私好みの方向に行ってくれない終わり方の小説が多くて執筆し始めてしまいました（汗）自己満足な小説になってしまっていますが今後とも頑張りますのでお付き合いくださると嬉しいです＾＾ (2019年4月21日 7時) (レス) id: 86b4dd6b0b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑠璃色の夢 | 作成日時：2019年1月25日 0時
