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カイの言う通りだ。
ルナーは俺たち・・・この世界の人々の道具ではない。
こんなにも幼いるうに我慢を強いることを神が望んでいるとは思えない。
何より、俺がこんな我慢をさせたくないのだ。
るうの憂いをどうやって取り除こうかと考えて、ふと、屋敷でるうが初めて【おねだり】をした時のことを思い出した。
そうか、るうは確か甘味を作るのが好きだった。
るうの気持ちが優先だから、いつ屋敷へ帰れるのかは未定だが、あそこにはるう専用のキッチン部屋があるのだ。
「るう。狼族のチビたちを覚えているか?」
俺の突然変えた話題に、るうは戸惑いつつも小さく頷く。
「あいつらに、るうの作った甘味を全部持っていかれた。俺はるうの作る甘味を楽しみにしていたんだが、その、だな」
「りきゅ・・・・?」
「また・・・作ってはくれないだろうか?俺は・・・実は甘味は苦手だったんだが、不思議とるうの作る甘味は甘すぎなくて、だな、あー・・・。まあなんだ。・・・食いたいんだ。もう一度」
最後は見下ろしていたるうの顔が驚きに見開かれ、真っ赤になっている様子に俺は羞恥心に負けそうになった。
最後の方は早口で言ってしまったが、言い切った俺を誰か褒めてくれ。
正直俺は甘いものは苦手だ。
元々肉が主食で、それさえ食えていれば甘味など必要なかったが、ナミはあれでも女で、王都ではこういう甘味が流行っているのだとか言い、時々甘味を仕入れて来ていたのだ。
この世界の甘味はとにかく甘い。
甘ったるい。
クソ甘い。
喉が痛くなるほどに。
るうが甘味を作ったと聞いて、俺は鋼鉄の意志で覚悟を決めて、どれだけクソ甘かろうが『旨い』と言うつもりで食った。
るうが作ったものなら、たとえ溶けた鉄だろうが、臓器が焼け切ろうがそう言うと決めていたが、意外なことにるうが持ってきた甘味は見た目も小さく可愛く、そしてほのかな甘みを感じる優しい味だったのだ。
まるでるう自身の心を模ったような、そんな気持ちにさせてくれるものだった。
そんなことを思いながらるうをもう一度見直すと、はにかんだ笑みをそのままに、照れくさそうにしながらも言ってくれたんだ。
「いっぱい、つくりゅ・・・っ」と。
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ダリア - バルさん!素敵です!!ログさんもっと絡みが見たいです!ルイくん可愛い!!良いぞ、もっと、るうちゃんを愛して!!! (2022年9月15日 7時) (レス) @page49 id: d57692a101 (このIDを非表示/違反報告)
akithin.(プロフ) - 更新楽しみに待ってます(*´-`) (2021年6月9日 0時) (レス) id: a790115b23 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃色の夢(プロフ) - kuroさん» いつも嬉しいお言葉をありがとうございます^^何度も読んでくださっていると聞いてとても励みになりました。愛おしいだなんて・・・(嬉泣)今後も頑張りますのでよろしくお願いいたします(*^^*) (2020年9月17日 0時) (レス) id: ef139e1273 (このIDを非表示/違反報告)
kuro(プロフ) - 更新ありがとうございます!いつも癒されてます!最後まで読んだ後に最初から読み直してますが読む度愛おしさが増すばかりです!これからも頑張ってください^^ (2020年9月16日 15時) (レス) id: 922f0caa1e (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃色の夢(プロフ) - 月さん» 嬉しいコメントありがとうございます^^リメイク前を読んでくださっていたのですね(嬉)あの時の瑠璃夢が現在の瑠璃色の夢でございます。改めて今後もよろしくお願いいたします(*^^*) (2020年8月22日 2時) (レス) id: ef139e1273 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃色の夢 | 作成日時:2020年6月12日 4時