水柱 対 音柱 ページ10
「よぉ冨岡!今日はちょっと話があってな、中入れてもらっていいか?」
宇髄さんは楽しそうに声を弾ませて水柱の屋敷から顔を出す冨岡さんに話しかけた。
一方の冨岡さんはと言うと、彼にしては珍しく不機嫌な表情をしながら、入れ、と短く口にした。
「それと、もう手を放せ」
「あ、悪い。」
宇髄さんは悪びれた様子もなくぱっと私の手を放す。
冨岡さんからは、かつてないほどの怒りの音がした。
怖い。なんで怒ってるんだろう。分からない。
そんな私の不安をよそに、宇髄さんは口を開いて本題を切り出した。
「俺はAを柱に推薦する。」
「断る。」
即答だった。若干の苛立ちを含んだピリピリとした声で宇髄さんが「理由は?」と問う。
「今回も重傷を負った。毒で死にかけたのだろう。まだ鬼殺隊に入って少しの者が柱になどなれない。」
「時透見てみろよ、剣握って二か月だぞ?それから、死にかけたことより生きて帰ってきたことを褒めるべきじゃねぇのか。こいつはお前の継子だろうが。」
宇髄さんの声が怒気を孕み始める。
怖い。ものすごく怖い。空気がピリピリしてる。
「…Aは、俺が死んだ後に水柱になる予定だった。」
その言葉に、私の頭は硬直する。
死んだ後って何ですか、聞いてないですよそれ。
「お館様が”氷柱”って指名して、柱として承認しているのにか?」
宇髄は淡々と、その言葉を口にした。
冨岡の目が驚きで見開かれた後、険しい目つきへと変わる。怒りの音が、大きくなる。
「宇髄。お前、お館様に推薦した後で俺の所に来たのか。」
「悪いな、これに関しては俺も譲る気はねぇんだわ。Aはちゃんと成長してる。お前と肩を並べて戦えるって理由で柱になることを承知して…」
「必要ない。」
宇髄の声を遮るように、冨岡は否定の言葉を口にして立ち上がる。
その場を後にしようとする冨岡に、流石に怒りをあらわにした宇髄は低い声で冨岡に問いかける。
「お前、そうやってずっとAの想い無視して何になるんだよ。コイツだってお前が死ぬのが怖くて仕方ないんだぞ。分かってんのか?」
冨岡は、何も言わない。
無言のまま、早足で歩いていく。
この場に居たくない。一刻も早く立ち去りたいと、訴えているようだった。
その様子を見て、Aは冨岡さん、と名前を呼びながら急いで冨岡の後を追いかけていく。
居間には宇髄が一人。深いため息をつくと、
「めんどくせーーーーーーー……」と小さな声で呟いていた。
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作者名:kanna | 作成日時:2019年10月22日 12時