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鬼に寄り添う者達 ページ7

悲しい音をさせながら、妓夫太郎の姿は風に吹かれて消えていった。

「仲直りできたかな?」

相変わらず、泣きたくなるような優しい声で炭治郎はそう言った。

禰豆子が力強くうなずいた様子を見て、炭治郎は微笑んでいる。



「ありがとう」

私の口は、気づけば炭治郎に向けてそんな言葉を発していた。

私自身、妹が妹になったせいで鬼を恨めずにいた。

鬼殺隊に身を置く以上、鬼を恨むのは当たり前。殺して当然。

それでも、私にはどうしても鬼を恨むことができなかった。
だからこそ使い勝手の悪い氷の呼吸を使っているのだ。なるべく痛い思いをせずに葬れるように。

だから、私と同様鬼を恨まず、鬼の心に寄り添ってくれる炭治郎の姿が、とても嬉しかった。

炭治郎は「なんでAがお礼を言うんだ?」と首を傾げている。


もうそろそろ、話してもいいかもしれない。

私が、妹と弟を殺してしまったこと。

私は口を開いて、妹と弟、そしておじいちゃんのことを炭治郎に話し始めた。


「…だから、私は妹のことを斬れるような冷たい奴で……えっと、炭治郎?」

一通り話し終えると、炭治郎は、俯いていた。

やっぱり嫌われただろうか。妹を斬るなんて、出来ないよね。普通。

炭治郎からあまり聞いたことのない音がする。

私も顔を下げて、炭治郎の言葉を待った。

「A!!」

「はい!!」

突然名前を呼ばれ、咄嗟に背筋がぴんと伸びる。

「Aは冷たい奴なんかじゃない!冷酷でも何でもない!!やっぱり名前は優しいよ!!」

あまりにも力強く言い切るものだから、私はぽかんと固まってしまう。

「でも、私は妹弟を斬り捨てたんだよ?やっぱり炭治郎とは違うよ…」

私の口は、小さな声でそんなことを言っていた。

「俺とAが違うのは当然だろう。違う人間なんだから。
Aは、妹と弟の事を考えてきちんと自分で正しい選択をしたんだな。妹の望みを叶えてあげられるAは立派だと俺は思う。
冷たい奴はそんなに悲しい匂いをさせながら悩んだりしない。」

Aは、優しいよ。

炭治郎は俯く私のことを宥めるように抱きしめながら、あの優しい声でそう言った。

「優しい」

炭治郎に言われると、胸は痛まなかった。

じんわりと、胸に温かいものが溢れるような感じがする。

頭に、何か温かいものが触れた。

目をやると、禰豆子が頭を撫でてくれている。禰豆子は微笑んでいた。


じわりと涙が滲んで、私はしばらくその場から動くことは出来なかった。

音柱と蛇柱→←何度生まれ変わっても



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設定タグ:鬼滅の刃 , 冨岡義勇   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:kanna | 作成日時:2019年10月22日 12時

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