探索 ページ28
「そっかぁ、Aも鋼鐵塚さんに刀を…」
「そうなの。二か月前に預けたんだけど、返ってこなくて。」
「でも、任務にも出てたんだろう?普通の刀で大丈夫だったのか?」
炭治郎は、Aが使っていた刀を思い浮かべて言った。
彼女の刀は普通の作りの刀と比べて薄く、長い。
恐らく彼女の体格と戦い方に合わせて作られているのだろう。
その言葉を聞いたAは柱になってからの任務の事を思い出していた。
―――どうして、もっと早くに来てくれなかったんだ。
そう言って友の亡骸を抱きながら涙を流した隊士がいた。
―――助けてくれ。
そう言い残して、自分の眼前で鬼に食われた隊士がいた。
柱としての任務は、基本的に他の隊士が手に負えなかった場合の事後処理だ。
駆けつけた時には既に隊士達の死体の山。
鬼と人の痛みの音が辺りいっぱいに広がっている光景を、柱になってから何度も目にした。
どれだけ正しい判断をしても、救えない命があることを知った。
自分の未熟さが憎い。宇髄さんが現役だったら、と何度思ったか分からない。
刀を気にする余裕は無かった。
鬼に会えば鬼を斬り、少しでも息のある者を救おうと烏を飛ばして隠を呼んだ。
それでも、死ぬ人は死ぬ。
私はそれを何度も経験しているけれど、それに慣れる事ができない優しい人を知っている。
―――冨岡さんは、きっと何度も後悔したんだろうな。
「A?」
最近の出来事に思いを馳せていたAの思考は、炭治郎の心配そうな声で引き戻された。
「あ、うん。大丈夫だったよ。ちょっと怪我してしのぶさんに怒られたけど。」
眉を下げて困ったように笑うAを見て、炭治郎は「そっか、よかった」と微笑んだ。
「それにしても、甘露寺さんの言ってた武器ってなんだろうな」
昨日の夜、別れ際に甘露寺が言っていた言葉を思い出しながら炭治郎は言った。
もう少し滞在する炭治郎とAに向けて、甘露寺は昨日の夜に「里には強くなるための秘密の武器があるみたいなの。探してみてね。」と言い残していったのだ。
その秘密の武器を探すために、炭治郎とAは里の山道を歩いていた。
「鋼鐵塚さんも見つけられたらいいんだけど…」
炭治郎が言うと同時、Aは「ん?」と辺りを見渡し始めた。
「子供の声がする。」
「あ、あそこ」
子供の姿を先に見つけたのは炭治郎だった。
そこには、子供以外に人影がもう一つ。
霞柱の時透無一郎は、自分の隣で懸命に言葉を叫ぶ子供の姿を虚ろな瞳で見つめていた。
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作者名:kanna | 作成日時:2019年10月22日 12時